第3話 依存

「そういえば、大丈夫なの?」


 その日も、俺は結局ミサキに起こしてもらって、一緒に登校していた。


 そして、ミサキは急に俺に話しかけてきた。


「え? な、何が?」


「テスト。もうすぐだけど」


 ……確かに、ミサキの言う通り、もうすぐ定期テストだ。


「いつもみたいに、私が教えてあげた方がいいよね?」


 これまた情けない話だが、勉強のミサキの方ができるのである。俺はいつもミサキに勉強を教えてもらっている。


 「いつものように」……結局、今朝も起こしに来てもらっている以上、強いことは言えないが……それでいいのだろうかと俺は思ってしまう。


「……いや、いいよ」


 しばらく考え込んだ後で、俺がそう言うと、ミサキはまたしても立ち止まって俺のことを見る。


「……え? 何? ごめん。よくわからないんだけど……いいって、何?」


「い、いや、だからさ……いつもミサキに教えてもらってばかりで悪いし……今回は自分で頑張ってみようかな、って」


 ミサキはずっと俺のことを見ている。その瞳は怒っているかのようにも見えるが……何を考えているのか、よくわからない。


「それ、大丈夫なの?」


「え? な、何が?」


「だから、私に教えてもらわないで、君、大丈夫なのか、って。ちゃんとテスト、良い点取れるの?」


 ミサキがずっと俺のことを見つめている一方で、俺はミサキからまた視線を反らしてしまう。


「だ……大丈夫だと、思う……」


「……そう。思う、ね」


 ミサキはそれからしばらく俺のことを見ていたが、急に興味を無くしたかのように、何も言わずに歩きだしてしまった。


 ……正直、大丈夫かどうかわからないが、これでいいのだ。


 ミサキだって、俺の勉強の手助けなんてしたくないに決まっている。


 俺自身だって、いつまでも惰性のような感じでミサキに助けてもらうのは良くない。


 だから、これいいのだ、と俺は自分に言い聞かせながら、ミサキの少し後を歩いて、学校に向かっていったのだった。

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