8-3


「見えた!」


 視界の利かない獣道を直走る事数分、突然木が無くなり、木でできた吊り橋がその姿を曝け出した。

 かなりボロボロだが躊躇っている暇は無い。慎重に渡ろうと思い、まずは俺だけ橋の上を数歩歩いた時、目の前に轟音と眩い光が突然襲いかかってきた!


「うぉ!? なにぃ!!」


 立ってられない程の揺れに、必死で手すりの縄にしがみ付く。が、次の瞬間、宙に浮く感覚。

 橋に雷が落ちたんだ! 偶然? いや、そんな訳がねぇ。牝狐がやったんだ! くそっ、あのアマ、そこまで力をつけていたとは……。


「ヴィゼル!」

盲人の道案内デスディレクション! 俺の運動エネルギーの向きを変える!」


 繋がりの切れた橋の縄にしがみついていればどうなるかは明白。落ちなくても遠心力で崖の壁面に叩きつけられる。だが俺ならその衝撃を和らげる事が出来る。

 

 ゴッ!


「ぐっ! いってぇ…」


 何とか手を離さずに済んだが、左腕一本で垂れ下がった橋の残骸にぶら下がっている状態だった。下は流れの早い川、落ちて助かっても川に飲み込まれて溺れ死ぬだろう。


「ヴィゼル! 大丈夫!?」

「大丈夫なわけあるか! ミューリを伸ばしてロープにして引っ張り上げてくれ!」


 直ぐに黒い螺旋状の紐が降りてきて、俺の胴体に巻き付く。


「マスター、ご無事で」

「後にしろ、独力で上げられるか?」

「この細さでは無理です。今、花様にも引っ張ってもらいます」

「よし」


 言うなり、体が上に引っ張られる。距離にして二メートル程だが、その動きは這いずるより遅かった。

 マズい。非常にマズいぜ。俺達の居場所がバレた。直ぐに此処を離れないと。



 ……何処に? もう崖の向こう側には行けない。村人達はすぐ来るだろう。きっと狐アマも。


 ……終わりだ、向こうが一手先んじた。


 ……いや、違う。奴の狙いは花だ。花を差し出せば……俺は、いきのこれ…る?






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