8-2

「ヴィゼル!」

「見りゃ分かる! 走れ!」


 一緒になって次々に現れる村人から逃げる。

 くそっ! 考えが甘かったか! 花が帰って来た事はバレなくても、このタイミングで異邦人が来た事は伝わった筈。何か動きがあれば逆に探れると思っていたが、まさか「とりあえず山狩りだ!」となるとは。

 しかも村人達の目にはもう自我が感じられねぇ。完全に洗脳されてるぜ、ありゃ。


「一応聞くが蛇神は?」

「見つかる訳ないでしょ! 歩き始めて直ぐこっちが見つかったのに!」


 …マズい。非常にマズいぜ。詰んでるのはこっちだったか。


「私が彼らを引きつけます! その間に逃げて下さい!」


 シャーロンが止まり、短剣を構えて村人達と対峙した。


「よく言った」

「そんな! 今度こそ殺されるわ!」

「まだそんな甘っちょろい事言ってんのか! このままじゃ全員死ぬんだよ! ミューリ!」


 ミューリが四足獣の形になり、背中から伸ばした触手で花を捕まえて、強制連行となった。


「シャロ! もう逃げて!」

「ミューリ、うるさいから口を塞げ! この先はどうなっている?」

「川が通る崖の間に橋が掛かっています。崖の高さは約二十メートル。幅は五メートルです」

「よし、俺達が橋を渡ったら切り落とせ。それで時間が稼げる!」

「了解、マスター」

「んんー! んー! んーん!!」


 俺達は崖に向けて、木々と草むらの生い茂る坂道を全速で駆け抜けていった。



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