8-1
場所を元の野営地に移し、一先ず
「仲直りの握手!」
というハナの命令に渋々従った。握った手は体温を全く感じさせず、ゴツゴツして、乾いていた。
その後、先に口を開いたのはシャーロンの方だ。
「それで、作戦というのは?」
「言えない」
「ヴィゼル!」
「言う必要が無い。知っても知らなくてもお前らに出来る事は変わらない。なら漏洩リスクの少ない方が良い」
「成功するかどうかを判断する権利すら与えられていないのに協力しろと?」
「シャロ! 協力って何すれば良いの?」
睨み合う二人に割って入るように花が聞いてくる。
「蛇神を連れて来い。以上」
「……え?」
「何故?」
「今回の作戦には蛇神がどうしても必要だ。俺が狐姫と対峙する時に半径百メートル以内には居てほしい」
「ちょっと待って! 私達だって直接姿を拝見した事無いのよ! 実在するかどうか……」
「実在するから村が存続してきたんだろ。妖狐が居るなら蛇神だって居るだろ。って言うか、連れて来れなきゃどうにもならん」
「分かりました」
「シャロ!? 当てはあるの!?」
相手が二人だとリアクション芸がいつもの倍だな、流石にうるさい。
「大丈夫です。貴女は蛇巫女なのですから、貴女が呼び掛ければ、白大蛇様はきっと応えてくれます」
「頼もしいついでに聞くが、今まで花が蛇神を呼んだ事は?」
流石にバツが悪そうな表情で、シャーロンは呟く。
「一度もありません。今までは
「手順とかは?」
「白大蛇様と直接関わる儀式は門外不出で、誰もその様子を見る事ができません。今年から花様にも継承の為に参加する予定でしたが……」
「そっか、まあ頑張れ。上手くいったら呼んでくれ」
そう言って寝転がる。まあ眠くないけど、動くつもりは無いアピールだ。
「分かりました。行きましょう、お嬢様」
「ええ!? 行くって何処へ?」
「心当たりが何箇所かあります。そこに行って呼びかけてみるしかありません」
「うう……」
花がこちらを見ているのが分かったが、素知らぬ振りを決め込むと、黙って二人は歩き出した。
「…………チッ!」
何一つ嘘は言ってない。意地悪でも何でもなく本当に蛇神が居ないとどうにもならないのだ。
ただ、その役割も自分が担当するつもりだった。二人でそれらしき場所を調べ、文献が残っていないかを調べ、やった! 見つけた! 二人は『妖狐』を倒した! めでたしめでたし! そして…………
「何を期待してるんだ? 俺は……」
その独り言に答える者は居ない。そして、その答えを導くだけの時間も与えてもらえなかった。二人が歩き出してから一分も経たない内に、遠くから掠れた叫び声が上がったからだ。
「居たぞ! 蛇巫女だ! 捕まえろ!!」
飛び上がって声のした方を"向いた"時には既に二人がこっちに"向かって"走っている所だった。
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