6-2

 そして今に至る。

 ミューリは私が起きたのに気づいたようで、黙って包みを解いてくれる。昨日は歩き回って汗をかいた。また川に行って体を洗っておきたい。


「川に行ってくる」

「マスターを起こしますか? そこまで離れると私は着いて行けません」

「大丈夫。昨日と違って服着てるし。何かあったら大声出すから」


 昨日はヴィゼルごと川まで移動した。寝ているヴィゼルの横でミューリが目隠しの仕切りになってくれた。

 百五十間(約二七三メートル)程離れた場所にある川へ行き、服を脱いで川に入る。この時期の川はまだ少し冷たい。




ガサガサッ!


「!!」


 何かが草むらを踏み締めてこっちへ来る! ミューリを呼ぼうと大きく息を吸ったその時、物陰から……


「お嬢様? もしかして、お嬢様ですか!?」


 聞き馴染みのある声が聞こえ、人が飛び出してきた。そこに立っていたのは、


「…シャロ?」


 蛇龍珠シャーロンジュウ。私の幼馴染であり、世話役の青年だった。

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