3-2

「……言ってる意味分かってんの?」

「どの道このままじゃ私は死ぬ、ヤマナシの人達に殺されるもの! もう貴方達に頼むしかないじゃない!」

「……プッ」


 ま、ギリギリ及第点って所か。口には出さないけどな。

 しかし、羞恥心で真っ赤になってプルプル震えてる所悪いが、全く欲情しないな。毛も生えてないし。このまま川で水遊びしてても違和感ねぇわ。まあ、このままじゃ会話もままならないだろうし、


「ミューリ」

「はい」

「きゃ!」


 命令を出すまでも無く、ミューリは一瞬で再びハナの服に戻った。そういや元は少女の人形だったっけ。その辺りのデリカシーは多少は有るのかね。俺は全く無いけど。

 ハナが黒い服を身に付けて一安心した所で、先にこっちから言ってやった。


「良いぜ。引き受ける。見返りも要らない」

「ありがとう、ミューリ。それで、虫の良い話なのは分かってるけど……え?」

「引き受けると言ったんだ。勿論できる範囲で、だけどな」

「いや、でもまだ何も言ってないのに」

「なんだ、断って欲しかったのか?」

「そうじゃないけど! でも……さっきまであんなに冷たかったのに、どうしていきなり?」

「一般論として甘ったれた考えを戒めただけだよ。お前自身の今後の為にな。それに……」

「それに?」

「お前に初潮が来るの待ってたら俺が干からびちまうぜ」


…………ブチブチブチブチィッ!


「とっっっくに来とるわあぁぁーーー!!!」


ドカァッ!!!


「あぶねっ! っておい! なんでミューリが攻撃に加わってるんだよ!」

「マスター自身の今後の戒めの為です。無闇に女性の怒りを煽る言動を控えていただきたい。最悪命に関わります」

「今まさに命の危機だけどな!!!」


 きっとこの先ロクな事にならないだろう事は容易に想像できた。なのに口元が歪むのが止められないのは何故だろうか?

 根拠の無い期待感と高揚感を胸に隠し、無数に振られる刃の軌道をギリギリで避けながら、ヤマナシへ向かって全速で駆けていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る