第67話 新たな課題
「エリンの父の会合への招待状か……」
「はい、商人を集めて定期的にパーティーをしているらしく、そこにアーサー様もどうですかということことらしいです」
孤児院へ出かけた日の翌日、ケイがエリンから預かったという手紙を持ってきた。流石は商人というところか、さっそくエリンは話を通していたようだ。ペーパーナイフを使って、開けるとあいさつ文と共に会場と時間、そして、参加者の名前が書かれていた。
最近は周囲の人物に関して覚えるようにはしているが、たいてい覚えはない。
家名がないってことは貴族じゃなくて商人がほとんどか……参加者の大半は平民なのにいったいなぜ俺が呼ばれたんだ?
もちろん、前の人生ではこの集まりに呼ばれることなんてなかった。その意図をアーサーは考える。そう、モルガンに他人の意図を考えるようにとしつこく言われた結果、彼はこれまでのノリで行動するアーサーではなく、考えるアーサーになったのである。
まあ、昨日のエリンの反応から食糧問題関係ではあるとおもうが……商人なら食料問題にも詳しいと思いきいたらなぜかやたらとほめてきたのは記憶に新しい。もちろん、その理由はアーサーにわかるはずもなかった。
そもそも、彼が食糧問題に関して考えているのは胸元にある『善行ノート』のに書かれた内容の影響である。
「エリンさんに聞いたのですが、この集まりでは珍しい料理がたくさん出るそうですよ。もちろん極ウマ鳥も……」
基本人見知りのアーサーはパーティーか……とちょっと渋い顔をしていたが、ケイの一言でかわった。地方料理を楽しみ始めた彼は食に関して貪欲になっているのである。
「マジか!! それは行くしかないな!! ふふふ、エリンのやつめ、俺がいろんなところの料理をたべているから気を利かせてくれたのか!!」
「きっと、そうですよ、あの人もアーサー様と仲良くなるのにはどうすればいいかしらって相談されたことがありますし……もちろん、私もお供しますからね!!」
「ああ、一緒に楽しもうぜ!!」
食い気に誘われたケイの言葉に、アーサーも満面の笑みを浮かべて頷く。今のアーサーは知っているのだ。食事というのは親しい人間と一緒に取るとより美味しいということを……
ちなみにだが、貴族と平民の格差が大きいブリテンで、本来は敵である身分の高い人間……しかも、王族であるアーサーが平民主催のパーティーに呼ばれるということはすごいことなのだがもちろんアーサーは気付いていなかった。
そう、結局考えるようになっても、バカの考え休むに似たりである。だけど、これは大きな成長はしているのだ! 多分……
エリンの招待を受けたアーサーとケイは彼女の屋敷へと向かっていた。なぜか城の近くに構えている屋敷ではなく、町はずれの別宅というのが気になったが、まあ、人の多い所で騒いだら迷惑だもんなと納得する。
料理だけでなくジュースもたくさん出るのだ。楽しみである。
そして……手に持っている『善行ノート』をなでているアーサーはちょうど聞きたいことがあるのだ。そう今回もまた、新しい文字が書かれていたのである。
その内容とは……
『ブリテンを襲う食糧危機のきっかけを解決せよ』
である。確かに革命のときは魔物や天候のせいで食料が不足していたのは覚えている。だが、具体的に致命的なことは記憶になかったのでエリンに聞いてみたのだ。
そう、アーサーがこのパーティに参加するのは決して食い意地だけではないのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます