第17話 新しい課題
「あー、あっさり決まってよかったーー」
二人に孤児院での仕事内容を説明した後、アーサーは自室で一息ついていた。これで課題である孤児院の問題は解決したはずだ。
もっとじっくりと説得するつもりだったので。こんなにもすぐに、しかも二人も決まるとは思わなかった。
「女子は甘いものが好きだというけどすごいな……エリンとかクッキーを食べてから顔色を変えたもんな。二人ともモチベーションも高かったし……、また、二人にクッキーをあげるとしよう」
不思議と目を輝かせて立候補した二人の顔を思い出し、見当違いなことを呟きながらどう未来が変わったのか確認することにした。
わくわくしながら『善行ノート』を開くと青い文字で
『孤児院を救ったことにより善行ポイントが10アップ』
『追加でメイドたちのモチベを上げたことにより、孤児院の子供たちの教育レベルが上昇する可能性があります。善行ポイントが5アップ』
『合計15ポイント得たおかげで人生が変動いたしました』
と書いてあった。メイドたちのモチベというのはクッキーをあげたことか? などと見当違いなことを考えていたが、続いて書かれている文字に目が留まる。
『モードレットの派閥に警戒されました』
その文字は赤く……まるでギロチンによって首を斬られたときに舞った血のような色で……アーサーは寒気に襲われる。
「なんだよこれは!!」
嫌な予感がした彼は恐る恐る未来の書かれているページを開いていく。そして、最後のページを見るとやはり変わらず、アーサーは処刑されていた。
大きな変化は彼の処刑に反対したのがケイとモルガンだけでなく、孤児院の人間たちも増えていたことだけだろうか?
なんで……
と思いながら尚早と共に日記を読み直す。まとめるとこうだった。
孤児院を助けたことによって、彼らの学力はわずかに上がったし、アーサーの平民からの支持もわずかに上がった。だけどそれだけだった。騎士や貴族の肥大化していく特権主義を止めることができずに、結局は王位継承者となったアーサーは貴族たちに逆らうことができずに、治療魔法の独占も防げなかった。そして、教育を受けた孤児院の子たちも平民出身ということでろくな働き口にありつけなかったようだ。
くそがぁぁぁぁ!! このままじゃ、だめだ……まだ足りない。貴族の言いなりにならないようにしないと結局は大きくは変化は望めないってことか!! だけど、どうすればいいんだ?
何かをしなければならないとのだが、その何かがわからない。今は王位継承者ではないので、ある程度は自由にできているが、彼が王位を継ぐと決まれば貴族たちはもっと強く囲い込んでくるだろう。こうなれば仕方ないので、モルガンの元に新しく何かいい案件でもないか聞きに行こうと思った時だった。
机の上に教会からの手紙が置いてあるのに気づく。
「そういえば聖女との会食はこの時期だったな……」
前の人生のことを思い出しながら封を切ると、達筆な文字で治癒能力を持つもの同士で意見交換会をしませんかという旨の言葉が書いてあった。
前の人生では取り巻きの貴族に「教会の機嫌を損ねてはなりませんぞ」と言われて行ったが無難な世間話をしただけの不毛な食事会だった。
「そもそもだ。俺の方がが聖女なんかよりもずっとすごいからな!! 意見なんて交換しても意味はないだよ」
基本的には面倒な事は嫌いな上に治癒能力に関しては無駄に自信があるアーサーである。最近はなぜかとりまきの貴族達も声をかけてこないようになったので遠慮なく断る事にして、さっさとモルガンに話を聞きに行こうとした時だった。
「善行ノートが輝いている……?」
新しいフラグが解禁されたのだろうと、急いで内容を確認すると新しく青い文字で追記されていた。
「聖女に実力を認めさせろ」
と……つまり、聖女わからせである!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます