第7話夢見心地
……キターーーー!
シルバリウスが屋敷にやってきてから4日目。
なんとランチに参加してくれるらしい!
朝起きてから伝えられて、ウキウキが止まらない。
だって、あのシルバリウスだよ?
しかも、肌艶が当初より良くなっているらしいよ。
これ以上格好良くなっていたら、どうすれば良いの?
「ぼっちゃま、分かりましたから手をあげてください」
「あ、ごめんごめん」
今はスチュアートに手伝って貰って着がえの最中だったのだが、妄想で悶えていた。
気もそぞろな中、頃合いだろうとスチュアートに車椅子を押されながら食堂に向かうと、既にシルバリウスは食堂にいた。
生シルバリウス……
素敵すぎです。
鼻血が出てないか何回か確認しながら、席に着くとシルバリウスも目の前に座ってくれた。
「お、おはようございます。よく眠れましたか?」
4日振りの“推し”(人に薦めたいほど好感を持っている相手という意味らしい)と喋る緊張から無駄にどもってしまった。
「ああ」
素っ気ない回答も良き!
なになに、これが”クールビューティ”というやつですか?
「何かお困りごとなどあれば、お声がけくださいね」
「ああ」
さすが元貴族。
豪快に食べているものの、カトラリーの扱い方など食事の所作も綺麗だ。
まぁ、貴族の話は“攻略書“の片隅に書いてあったような内容なので、勿論本人が言わない限り口にはしないけど。
暫く無言で食事を進めていると、シルバリウスから声をかけられた。
「質問いいか?」
チラ見し過ぎていたのがバレたのかと冷や汗をかきながら、問いに返す。
「なんでしょう?」
シルバリウスはうかがうように見ている。
――ソースとか顔についてないよね?
推しの視線をいただいています!
粗相してないよね。本当大丈夫だよね?
「……何をすればいいんだ?」
……。
あー!
そうだよね!
この屋敷何も無いし、最新の魔道具は殆ど無いから暇だよね!
魔道具があると、つい魔力が使われてしまう為、この屋敷では原始的な暮らしをしているのだ。
俺の場合は少しでも魔力が抜ける行為が命取りになるから。
最近は魔導書籍や魔道遊戯など魔道具を介すものばかりで、未だに紙の書籍を読んだり、木で出来た遊戯盤を使ったりはよっぽどの物好きだけだ。
でも、その案内すら忘れていたのはこちらの失態!
「すみません、この屋敷は殆ど魔道具を使用していなくて。
必要でしたらスチュアートに言っていただければ用意させます。
あとはこの屋敷には紙の書籍があったり、遊戯盤があったりするので、良かったらご利用ください」
シルバリウスは固まった後、ため息を吐きながら、片手で額を押さえている。
そのアンニュイな表情も本当セクシー!
……頭痛でもするんだろうか?
ハッ!
俺は本が好きで本があれば他にはあまり必要ないタイプだったから気にしなかったが、やはり娯楽が少な過ぎたか。
三ヶ月もあったからもうちょっと、遊べるものや暇つぶし出来るものを用意しておくべきだった……。
いっそ、カタログを渡して、自分で欲しいものを選んで貰うかと考えていたら
「リューイ様の為に出来る事はないかと聞いたんだ」
……。
……。
……。
名前呼ばれた!!!!
リューイ様
リューイ様
リューイ様
頭の中で、何度もリフレインする。
――んん
ハッ。
妄想の世界に飛び立っていた所、スチュアートのわざとらしい咳払いのおかげで戻って来れた。
俺の為に何かしたいと思ってくれるなんて、それだけで幸せだ。
…先の短い身の上だ。ちょっと位要望をあげてもよいだろうか?
迷いつつも言ってみる事にした。
「ありがとうございます。様は結構ですよ。えーと、もしよろしければ、話し相手とかになっていただけると……」
シルバリウスは怪訝な顔をする。
やっぱり、大層なお願い過ぎたよね!
「あ、いやちょっと言ってみただけですので、お気になさらず。昨日処理の方法も選択いただいたと聞いたので、あと一週間ほど屋敷で好きにお過ごしいただければと思います」
慌てて、言い直す。
気分を害して関係が壊れて見送りすら出来なくなるのは困る。
「……。後でリューイの部屋にうかがおう」
え?
マジで!?
ヤバイー!
嬉しすぎる!!
“推しが尊い”!
あのゲームで一方的に見るしか出来なかったシルバリウスが俺の話相手になってくれるんだよ?
何を貢げばよいですか?
俺の全財産貢いじゃう?
なんか、幼少時に色々アイディア出していたらしくて? なんか顧問料とか個人資産に入ってくるんだよね。
欲しいと言ったらあげようかな。
気もそぞろな中食事を終え、一度解散した後、シルバリウスは本当に部屋に来てくれた。
そして、当たり障りのない、最近読んだ本の話などをして過ごした。
シルバリウスは俺が話す内容を聞いてくれて、相槌も打ってくれる。
シルバリウスからも最近の情勢的なものやこの領地の質問があったので、知る限り教えたりして、大変有意義な時間を過ごしたばかりか、明日もランチ&話相手になってくれるというではないですか!
興奮冷めやらぬまま、寝た。
……案の定、はしゃぎすぎたようで、夜中に熱が上がって、暫く寝込んだ。
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