第1話

 あの日から10年、俺はさまよっていたところをとある老人のラッセルさんに助けられて小さな町で暮らしていた。ラッセルさんも含めてこの町の人は皆優しい。小さい頃のあのことを忘れさせてくれた。

 そう、あいつらが来るまでは…………



 「よく聞いてくれたまえ。この地域は今日から我々が管理させていただくこととなった。まずは町の産業はすべて機械に行わせ、文化的な風習は全部廃止せよ」

 黒服の男は淡々と言うと後ろにある車両からぞろぞろと機械が出てきた。

 「すまんがの、儂らには儂らの世界ってもんがある。こんな機械に勝手に立ち入られるのはごめんなのじゃよ」

 ラッセルさんが俺や町の者を諌めながらも、2倍くらいの大きさの黒服に対して堂々と話した。

 黒服はにやけた顔を浮かべて次は小馬鹿にするように言い放ち、一枚の紙を見せつける。

 「いやぁ、ではありませんよ。我々もちゃんと

 なんと町長のサインが入った管理許可書が握られていたのだ。

 「……しかし、我々には機械など…………」

 「うるさいなぁ。それともあなた方もあののようになりたいのですか?」

 黒服がそう言うとラッセルさんも他のみんなも黙り込んでしまった。抵抗する気力はすっかり失われて機械がズカズカと侵入していく。

   「……ふざけるな、貴様あァァ!!!」

 俺は黒服に最大火力のファイアを放つ。

 一瞬で奴は消え去り、地面には焼け跡が残った。

 周りに目をやると皆が引くように下がっていった。    俺はやってしまった、手に入れた平穏が…………


 

 「……ありがとう、サン」

ラクスさんは涙を浮かべながら何回もそのことばを繰り返した。俺もつられて泣いてしまう。

 「でもな、儂等にはエクシスの生き残りであるサンをこの町の中で匿うことは出来ないんじゃ。いずれここにも捜索は来るじゃろう。君は逃げなさい」

 ラクスさんに続くように町の皆も同じような言葉をかけてくれた。

 俺は急いで町を出た。振り返らず全速力で。

 

   

  「さて、儂らもやることを済ますかの」

町の人々は頷いて、全員が向こうから来た戦車の方を見ていた。

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