8.私のテキトーな創作論③~自分の物語を俯瞰的に見ること~


 何度か公募に挑戦していると、この小説では絶対に受賞はできないだろうな、という感覚に包まれることがあります。


 自分の中では「面白い! これいける!」と文章を連ねていて、いざ完成してみて冷静に物語を俯瞰してみると、「平凡」という二文字がふわふわと風船のように大きくなったと思ったら、ずしんと重い石になって脳天へ直撃してくるのです。


 はっとして自分の文章を読み返すと、机の上で絶望の淵に立たされていきます。



 キャラの魅力は生きているけれど、このキャラはどんな世界で生きているの?

 隠れたテーマはわかるけれど、どの小道具を使って読者に伝えたいの?



 昨日、物語を紡いだ私を、今日、物語を読んだ私が、全力で全否定するわけです。


 そこまで言わなくてもいいじゃん、と昨日の私が唇を尖らせて抗議して、いいですあとはやっとくわ、と今日の私が朝3時から濃い目のブラックコーヒーをがぶ飲みしながら改稿をするわけです。


 ということを繰り返しながら、物語に数々の秘蔵のスパイスを加えては味見をして、物語の入った鍋をぐつぐつ煮込むのですが。



 一度、レシピ通りに作った料理の味を、大きく変えるのは至難の業。



 たまに、どうしたらいいのか、わからなくなります。




 ただ言えることは、昨日の頑張りを超えた私が描いた小説じゃないと、今日の私すら超えられないってことです。




 物語を描くことに慣れた人は最初からそれに気づいていて、どんなキャラがどんな世界で動けばいいのか、プロローグの段階で気が付いていると思うのです。知らないけれど。



 物語を描くことに慣れていない人は物語が完成してからそれに気づいて、このキャラが映えるためにはこの世界を構築しなければならないと、エピローグの段階で気づくのです。私ですけれど。




 ということにようやく気付き始めてきた、夏の夜。



 あっつい湯船に浸かりながら、「さーて、今描いている小説に、どんなスパイスを加えてやろうかなー」と、ぼんやりと考えていました。




 まぁ、とにかくですね。

 物語が完成しないと、見えてこないこともあるということです。



 だから皆さん。

 小説は最後まで必ず、まずは完成させましょう!



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