2.私の頭の中には、小人が住んでいる①


 高校生から大学生にかけて、ひたすら日記やブログを書いていた時期がありまして。


 日々の思うことをつらつらと吐き出すことは、心の安定に最も効果のある処方箋しょほうせんです。


 それもあって、文章力はだいぶついたのかなと勝手に思っていますが、仕事の文章となると「わかりにくい」という烙印を押されてしまいます。仕事はあまりやる気がないですし、専門分野の知識や専門用語の理解力、誰かに大切なことを伝える技術力が皆無なので、仕方がないのですが。……ダメな社会人です……。


 最近、つっこまれたのは、「別途、検討をする」という文章です。


「別途のあとに『、』なんている? 別途、料金なんて書かないよね? 別途料金だよね」


 言われてみて、「あぁ、確かに」と手を打ちました。私は小説だと、『、』を多用するのが大好きなので、そのノリでビジネス文章を書いていたわけです。行間の想像を大事にしたいのです。でも、それは小説の世界では許されるけれど、ビジネスの世界では許されないらしいのです。社会人は行間など要らない。事実と情報だけ述べよ。



 確かにね。

 子供の頃を思い返してみると、本や文章とはあまり触れあってこなかった私です。漢字は苦手でしたし、「新聞読め」と親に言われてもテレビ欄と四コマ漫画しかわからないし、国語の点数も並み以下。小説ってなんぞや?? と首を傾げる毎日でした。


 それよりも、独りで勝手に物語を空想して、「ふふふ」と変な笑いをこぼすような変人でした。完結した漫画とかの続きを妄想して、その目次をノートにひたすら書き出して心をときめかせていたのです。


 中学校の頃、グループごとに日々の出来事を記録する交換日記みたいなものがありました。今日は何を勉強したとか。数学の問題が難しかったとか。今思えば、一体何を目的にしていたのかよくわからないものでしたが、何を思ったのか、私はそれを、めっちゃ真面目に書いていたのです。

 休みの日に家族でこんなことをしましたー、外で遊んでこんなことをしましたー、そんなどうでもいい出来事をつらつらと長々と。



「書きすぎだけど、月瀬さんのとこ、おもしろいね。よくこんなに引き出しがあるね」



 私のノートを見ながら、友達は若干引き気味な顔をしていましたが、


 そうか。とその時、私は思ったのです。



 私の頭の中にはきっと、分厚い本をたくさん本棚にしまっていて、魔法の杖を片手に物語を喋り散らかす小人が住んでいるんだ!



 そういう言葉をもらって調子に乗った私は、その時から物語を創作するということに目覚めたのです。


 でも、頭が軽くて安直な私は、無謀にもなんと、漫画という表現を選択して物語を描き始めたのです。



 もしタイムマシンがあって、過去に戻れるのなら、私は過去の私を蹴っ飛ばしますね。



「おい自分、どの口と絵心で漫画を描くなんて言ってんの?!」




 昔からゲームが大好きなのでした。だから、まずはゲームの世界を絵で表現してやろうと、当時の私は目論んでいたわけです。



 今ではどちらかというと、ゲームの世界観に浸ることが好きのですが。

 最近で言うと、ニンテンドースイッチのスプラトゥーン2は、ゲーム動画をなんとなく眺めていて、作り込まれた世界だなーと感心していました。イカが進化した世界で縄張り争いをして、色の塗り合いをしているシューティングゲームですが、なかなか引き込まれるようなストーリー・設定を持った世界観なのです。言葉選びも秀逸、キャラデザインもスタイリッシュですし。やるな、任天堂。



 神話とか妖精とか、王とか女神とか、そういう海外のお話を紐解くのも楽しいですが、物語というものはやっぱり、自分の手で自分色に染め上げながら作り上げていきたいな、と思っているこの頃です。


 まぁ、創作の世界はきっと、どこかにオリジナルがあって、私たちはそれの解釈を広げて、さも自分の世界だと主張するようなものだと、心の中では思っているのですけれど。


 でもそれを面白いと思うかは、やっぱり物語の構成力と説得力です。要は、魅せ方。人を惹きつける魅力です。


 どんな王道ストーリーだって、キャラが魅力的であれば、たちまち素晴らしい物語へと変貌するのですから。



 ……話が今になったり過去になったり、あっちこっちしていますが、そんなお話を、私は作っていきたいと子供の頃から思っていたわけなのです。



 つづく。




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