第11話

「う、浮いてるッ?!」



女子高生の学力に、進化と退化は一進一退なのだ。


(この場合は能力だけど…)


ただし、どんなに頑張っても、10cmくらいが限界だった。


「これって、どうなのよ...」



――でも、これでハッキリした。これは、夢だ。私は、そう結論付けた。



「せーのっ! これは夢、これは夢、これは夢、これは夢、・・・・・・」



まるで念仏でも唱えるように必死で自分に言い聞かせながら、ふたたび、聖女アリシア・ハートフィールドの元へ向かった。




そこにある死体は惨たらしくも、首と胴が切り離されており、彼女が私を驚かせようと迫真の演技を披露しているとも見えなかった。



(あぁ、どう見ても夢には思えない)



私は、彼女の死体をそのままにしておくはどうかと思い、ふたたび巨大な姿に戻るとその死体を『魔法の泉』に持っていった。


「泉に入れたら、生き返らないかしら?」




――私はそっと死体を泉に入れようとした。


すると、泉の底から声が聞こえてきた。




『ちょっと、ちょっと! あなた、何をする気なのよ!』

「え?」



『え?じゃないわよ! そんなの入れられても【あなたが無くしたのは 金の死体 ですか?それとも 銀の死体 ですか?】なんて、たずねるわけないじゃない!!』



「...え?」



『もう! 理解が遅いわね。あなた――』

「金でお願いします!」



私は、真面目にお願いした。



もしかしたら、この世界で生きていかねばならないかもしれない……。

そうなれば、お金は必要だ。




――これは、現実を見据えた選択だ、と自負していた。




『はぁ~? あんたね、捕まるわよ。聖女様の形をした純金もって、それも首と胴が切断されたよ。気味悪がって、誰も買わないわよ。さらに、あんたも首チョンパよ』



どうやら、私は現実を見据えてはいなかったようだ。



「たしかに...。ところで、あなたは泉ピン子さんでしょうか?」

『誰よ、それ?』


「いえ、なんでもありません」


そうは言いつつも、秘かにショックを受けていた。



――ひょっとしたら、お笑い芸人として、異世界を無双する話じゃなかったのかッ?!



『それよりも、あんたが こんな所で のんびりと水なんて飲んでるから、聖女の危機に間に合わなかったじゃない! このあとの展開、どうしてくれんのよ!?』





「...え?」


『え?じゃないわよ! こうなったら、あんたが 聖女 やんなさいよ。いいわね! そいや!!』



泉からのナゾの掛け声が響くと、私の身体が金色に輝きを帯びた。


そして気が付くと、この身体が聖女アリシア・ハートフィールド、

その人となっていた。



『この森をまっすぐ行くと、あんたの王様が待ってるわ。聖女に一目惚れしたストーカーのような男だけど、顔は悪くないはずよ!』


「い......、いやです」


私はスッパリと断った。



でも、反抗虚しく、それ許すまじか。

泉からの声は 鬼のように 恐ろしかった。



『責任とって! さぁ、行って! 』



私は、泣く泣く、声に従うのでした。



◇ つづく...

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