第10話
「まずは、この『魔法の泉』を現代知識を持って解読してあげるわ!」
◇
ふたたび泉へ戻ってきた私は、嗅覚をもって究明にとりかかることにした。
「こ、これって?!」
そこで、はじめて気づいたのです...。泉に映る自分の顔に 鼻が無い......。
「ま、まぁ...。そんなことも、あるわよね!」
激しく動揺しながらも、続いて味覚で究明にとりかかった。
「ふむふむ。これはッ!?」
高校生の科学好きなら、こういうに違いない。
――無味無臭。
「私は、バカにされてるのかぁー!!」
私の怒りの咆哮は、未開の森林を大いに震撼させた、に違いない。
泉の水がさざなみ、大気が震えていたのだ。
「ったく。夢のくせに、変なとこだけはリアリティの演出が過ぎるんだから」
なんて文句を言いながら、ふたたび泉の水を口にふくむ。
疲れた身体の隅々にまで、元気が溢れてくる。
「そうだ! どうせ、夢なのだから、もっとカワイイ姿に変身できないかしら?」
私は、幼い女の子の姿をイメージしながら、
泉に映る自分に向かって「ドリームスイッチ、オン」と叫んでみた...。
――すると、どんどんと身体が縮んでいく。
期待に胸を躍らせて、泉の中の自分をのぞき込むと、
小さな身体が、目に飛び込んできた!
「おぉ、これこれ――。って、違うわーい!」
大阪人の独特なポテンシャルが生み出した『ノリツッコミ』だ。
友達の少ない私は、秘かにツッコミが上手くなる3つのトレーニングを課していた。
友達ができたときには、皆から笑いをドッカンドッカンと取るために。
まさか異世界で(しかも誰もいない場所で)披露することになるなんて...。
――はッ?!
まさか、この世界で初めての『漫才芸人』として無双していくパターンなのか...?
そんなアホな事を思いつつも、自分の姿に目をやる。
「でも。私が成りたかったのは、コレじゃないんだよぉ~」
それは白くて小っちゃくて、ふわふわと宙に浮いていた。
◇ つづく...
※ベリオソス(mini)
※アルファポリス版では、イラストが見れます。
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