第10話

「まずは、この『魔法の泉』を現代知識を持って解読してあげるわ!」



ふたたび泉へ戻ってきた私は、嗅覚をもって究明にとりかかることにした。



「こ、これって?!」



そこで、はじめて気づいたのです...。泉に映る自分の顔に 鼻が無い......。


「ま、まぁ...。そんなことも、あるわよね!」




激しく動揺しながらも、続いて味覚で究明にとりかかった。


「ふむふむ。これはッ!?」



高校生の科学好きなら、こういうに違いない。




――無味無臭。




「私は、バカにされてるのかぁー!!」




私の怒りの咆哮は、未開の森林を大いに震撼させた、に違いない。

泉の水がさざなみ、大気が震えていたのだ。



「ったく。夢のくせに、変なとこだけはリアリティの演出が過ぎるんだから」



なんて文句を言いながら、ふたたび泉の水を口にふくむ。

疲れた身体の隅々にまで、元気が溢れてくる。



「そうだ! どうせ、夢なのだから、もっとカワイイ姿に変身できないかしら?」



私は、幼い女の子の姿をイメージしながら、


泉に映る自分に向かって「ドリームスイッチ、オン」と叫んでみた...。



――すると、どんどんと身体が縮んでいく。



期待に胸を躍らせて、泉の中の自分をのぞき込むと、

小さな身体が、目に飛び込んできた!


「おぉ、これこれ――。って、違うわーい!」


大阪人の独特なポテンシャルが生み出した『ノリツッコミ』だ。



友達の少ない私は、秘かにツッコミが上手くなる3つのトレーニングを課していた。

友達ができたときには、皆から笑いをドッカンドッカンと取るために。



まさか異世界で(しかも誰もいない場所で)披露することになるなんて...。




――はッ?!




まさか、この世界で初めての『漫才芸人』として無双していくパターンなのか...?




そんなアホな事を思いつつも、自分の姿に目をやる。



「でも。私が成りたかったのは、コレじゃないんだよぉ~」



それは白くて小っちゃくて、ふわふわと宙に浮いていた。



◇ つづく...


※ベリオソス(mini)

※アルファポリス版では、イラストが見れます。

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