第43話 帰還の報告と銃の腕前

 俺がその人に帰ってきた挨拶をできたのは、伊賀から帰ってきてから2週間が経過したころだった。利家と信長と一緒に昔通っていたその人の館に向かった。

「一巴師匠!!お久しぶりです!!」

「千代松!久しぶりだね。元気にしてたかい?」

俺の銃の師匠、橋本一巴師匠は前と変わらない優しい笑みで俺たちを迎えてくれた。

「はい!おかげさまで。師匠もお元気そうで!」

「うん。伊賀はどうだった?」

「修行はすごく大変でしたが、その分強くなれました!」

「一巴!千代松はすごいんだぞ!伊賀で上忍になっちまったんだぜ!!」

信長が俺が上忍になったことをまるで自分のことのように自慢する。利家も自慢げにうなずいている。

「上忍!?もしかして大忍術体育祭で?」

「はい。優勝しました」

優勝した時にもらった短剣を差し出す。師匠はそれをまじまじと見つめ、微笑んで俺を誉めてくれる。

「おお!!さすがだな!あれはここ5年は上忍の家系から優勝者が出ているのに!」

師匠からの賞賛に思わず頬が緩む。

「ちょうどいいじゃねえか。その時のことを聞かせてくれよ」

「いいですね。僕もぜひ聞きたいです」

「俺も」

信長の提案に師匠と利家が賛同する。

「じゃあ聞かせてやるか、俺の武勇伝。あの大会で当たった最初の強敵は南の里の上忍・服部さくらで……」

俺はこんな感じであの大会のことを話して聞かせた。特に決勝の丹波戦の話はとても盛り上がった。

 話が終わったころ、一巴師匠がとんでもないことを言い出した。

「ははっ!千代松は本当に強くなったみたいだね。ぜひともその力を見せて欲しいな」

「えっ!?それはどういう?」

「千代松が伊賀に行っている間、こっちも頑張ってたんだよ?」

そう言って一巴師匠が信長と利家の二人を示す。

「信長様は免許皆伝を与えましたし利家様も今度試験をする予定です。どうですか?1度銃の腕で競ってみては?」

ほう、俺に銃で挑むのか。おもしれぇ。

「いいですよ。やりましょう」

「信長様と利家様は?」

「無論だ」

「面白そうですね」

「じゃあ、行きましょうか」


 そういってきたのはいつだったか試験をした草原。そこに人の形をした木の的が置かれている。

「点数は的に書いてある円に書いてある点数。3発撃ってその合計ポイントで競いましょう」

頭と胸に何重かの円が書かれていて真ん中が5点。離れていくにつれ4点、3点と下がっていき、円以外に当てたら1点のようだ。懐かしいな。こういう練習をよくエアガンでしたものだ。


「誰からいきます?」

「俺からいこう」

信長が前に出て、銃を構える。

そして基本に忠実な構えから引き金を引いた。

一発目、3点。

二発目、5点。

三発目、2点。

計10点。

「うん、悪くない記録だね」

師匠はそう言っていたが、信長は満足していないようだった。


「次は俺がいく」

利家のターン。

信長同様、基本的な構えから引き金を一発一発丁寧に引いていく。

一発目、3点。

二発目、5点。

三発目、0点。

計8点。

最後ちょっと構えが乱れていたのは信長への忖度だろうか。意図的に構えを乱していたように見えた。


「最後は俺だな」

俺のターン。あの3人にここで長年銃を愛し続けたこの俺の真の実力をお見せしよう。俺は腰からリボルバーを抜き、体に近く構える。戦国時代の人からすれば異様な構えに見えるだろう。

「行きますよ?」

俺は一言そう言ってから、引き金を三連続で引いた。

パァァーーン!!パァァーーン!!パァァーーン!!

その全弾が胸の円の中心に着弾する。

点数は満点の15点。


「どうでした?」

俺がそう言って振り返ると3人はあんぐりと口を開け、固まっていた。

「い、いやはや恐れ入ったよ」

「ま、マジですげぇな」

「ああ、本当に驚いたよ」

「あ、ありがとうございます」

「ちょ、ちょっとその銃、見せてくれないかい?」

「え?ああ、はい」

師匠に言われ、リボルバーを差し出す。

3人は食い入るようにリボルバーを見ていた。俺のスコアそっちのけで。

わかるよ。リボルバーってかっこいいもんね。ロマンにあふれてる。俺が前世で死んだのもリボルバーに魅力がありすぎるせいだしね。でもちょっとは俺のスコア気にしてよ……。満点だよ?もっとちやほやされるもんじゃないの?

「なるほど、引き金を引くと同時にここ(シリンダー)が回るようになってて…」

「それで連続で弾を発射できるのか」

「よくこんなの思いついたな……」

うん。リボルバーなら仕方ない。


 30分後。

「勝負は俺の勝ちでいいな?」

「ああ……」

「ああ、完敗だよ。千代松」

信長はとても悔しそうだ。きっと信長もずっと練習していたのだろう。それとは逆に利家は潔く負けを認めている。

「千代松は本当に強くなったな。今なら銃以外も使える勝負だったら僕でも怪しいかも」

一巴師匠にここまで言われるとさすがに照れる。

「さすがにそんなことないですよ」

なんて返していると、悔しそうにしていた信長が衝撃的な一言を発する。

「では次は俺と利家と一巴VS千代松で模擬試合というのはどうだ?」

「へっ!?」

さすがにそれは無理では?

だが残りの二人の反応は以外にも好印象だった。

「さすが信長様、素晴らしいお考えです」

「確かに悪くはないかもしれないね」

「千代松はどうだ?」

「え、えっと……」

俺が言葉を濁らせると3人がさらに言葉を続ける。

「千代松、3年前の再戦だ」

「まだ師匠として弟子には負けられないな」

「千代松、やるよな?」

こう言われると、「は、はい」と言う他になかった。

槍の又左、戦国の砲術家、そして織田家の頭領。そんな3人との真剣勝負が始まる。








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