第37話 緊急軍議と作戦案
「報告です!!信長様の弟君の信行様が”弾正忠”を名乗り末盛城にて挙兵!!林秀貞、林美作守、柴田権六らが率いるおよそ3000の軍がここ、清洲城に向かって進軍しているとのこと!!」
その兵士の叫んだ報告に大広間は騒然となった。
「何ィィ!?」
「“弾正忠”だと!?織田家の頭領というつもりか!?」
「いや、それより権六殿と林兄弟が裏切った!?」
だが騒ぐ家臣団とは裏腹に信長だけが落ち着いているように見える。
「静まれ!!」
信長の一括で広間に静寂が訪れる。続けて信長は報告の兵士に問う。
「敵軍は今どこに?」
「あと半日でここに到達する場所に」
「そうか、御苦労だった。もうよい。又左!!地図を持ってこい!!作戦を考える!!」
「ハッ!!」
緊急軍議が始まった。
「ここに兵は何人いる?」
「急いで兵を集めろ!!」
緊急軍議は大騒ぎになった。何しろ兵も集まってなければ、敵が来るまでの時間もない。
その中で信長だけが終始、落ち着いていた。
「ああ、クソっ!!この作戦もダメだ!!」
「あぁ、やっぱり籠城しか……」
「そうですな、やはり籠城しかなさそうですな」
「ならん!!籠城は援軍が来る時の策だ!今の尾張には我らの味方は一人たりともおらん!!」
籠城にまとまりかけた家臣団の意見を信長が飛散させる。まあ、助けが来ないのに立て籠もってもジリ貧だしね。
「で、では信長様はどうなさるべきかとお考えですか?」
籠城の案を却下された者が信長に尋ねるが、信長はそれには答えず、俺に問いかける。
「千代松、そなたの軍は何人動かせる?」
「800、全軍が清洲で待機中。全軍、問題なく動かせます」
俺の拠点はそもそもここ清洲だしね。
家臣団がおぉと声を上げる。
「よし!では皆は出来るだけ多くの兵を集めて待機!!千代松、又左、一益と長秀はついて来い!!」
「「ハッ!!」」
信長が広間を出ていき、俺たち4人が慌てて後を追う。広間は困惑に包まれた。
信長は広間から少し離れると適当な部屋に入った。
「あそこにはまだ信行方の者がおるかもしれぬからな。だが少なくともこの5人はないだろうと考えておる。それでは作戦を考えよう」
なるほどね、林秀貞と柴田権六という重臣二人が裏切ったならほかの裏切りも考えるべきか。
「まず、長秀の意見を聞きたい」
「私は籠城を考えます。とはいえ我らに援軍がないとジリ貧なのも事実。ですが援軍がないなら作ればよいのです。我らの誰かが那古野へ行き、清洲が落ちる前に那古野の駐在兵を率いて敵の背後を取り、清洲の軍とで挟みうちにします。いかがですか?」
「ふむ」
なるほど。確かに籠城ならしばらくは持ちこたえられるだろうし、那古野からなら数日で援軍が届く。さすがだな。でもこの策だと那古野の状況がわからない今の状況だとリスキーではないだろうか?
「俺は長秀殿に賛成です」
利家は賛成のようだ。
「千代松はどうだ?」
「そうですね……俺は、反対です。その策だと那古野へ行く動きを察知された場合援軍が届かず、援軍のない籠城戦となってしまいます」
「ほう、では千代松に案はあるか?」
「はい。まず軍を大小二つに分けます。まずは~」
俺は広間で話し合っていた時から考えていた策を話した。
「~~以上です。いかがですか?」
「ふむ」
「私は千代松に賛成です。大きい方の軍を信長様が率いるなら士気も高くなります。今までの作戦で最も勝率が高いように感じました」
一益が俺の意見に賛成の意を示す。
「又左、長秀はどう思う?」
「そうですね、確かに美作守殿は頭も回る。那古野に手を回していてもおかしくないですね。千代松の案も良い案だと感じました」
「私も異論はありません。さすが千代松殿です。これなら
「長秀、今は控えろ」
本当だよ。こんな大事な時に何言ってんだ。
「とにかく千代松の案でいいか?」
「「はい」」
なんと俺の策で戦をすることになってしまった。
その後、俺は一度屋敷に帰り祈に事情を話し、祈の安全のため祈に清洲城内に移動してもらった。
次に俺は配下の隊長たちを集め、俺の率いる軍の会議を始める。
「俺たちの軍の役目は小規模の軍を率いて林兄弟の軍を信長様が来るまで抑える。これだけだ」
「なるほど。抑え込むのはどのくらいの時間なのだ?」
二番隊隊長・黒沢大吾が尋ねる。
「信長様が柴田権六の軍を退けるまでだな」
「ですが柴田権六は織田家の中でも屈指の猛将です。失礼ですが、信長様は退けられるのですか?」
「そこは信長様を信じるしかない。でも利家も長秀も他の多くの武将もついているし大丈夫だろう」
三番隊隊長・蓮沼常道の失礼な発言。まあ当然の疑問だけど。でも言った通り信じるしかない。
「では時間がないので今すぐ軍を整えて清洲城の大門に集合させろ。ではみんな、頼んだぞ!」
「「ハッ!!」」
話し合いが終わり、常道と大吾が部屋を出る。彦三郎は俺に話しかけてきた。
「ずいぶん急ですが……ついに初陣ですね。我が主」
「そうだな」
「きっと奥様も天国で喜んでいることでしょう」
彦三郎が甲冑姿の俺を見てそう言う。
「ああ、やっとだな」
俺は母上の手紙を思い出しつつ、続々と集まってくる外の兵士に目を向ける。
俺の初陣が始まる。
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