第36話 俺の軍と弟の挙兵
正式に信長の配下になってから一か月が経過した。
この一月で俺が主にしたことは父上が率いている軍の再編だ。父上が率いていた軍は主君だった織田信友の軍もほぼ父上の管理下にあったことも加味すると5000人ほど。それが信長様との戦で半数ほどに減り、さらに父上と織田信友がいなくなったことで多くの農民兵が各々の故郷に帰った。
結果、俺の率いる軍は800人ほどとなった。この軍の特徴は農民兵がほぼおらず、大半が下級武士のため個々の戦力が比較的高く、いつでも戦いに出れるところにある。さらに農民ではないため日頃から訓練させることができる。これからビシバシ厳しく育てていくつもりだ。すでに父上に鍛えられてたみたいだけどね。
ここで俺の隊の紹介をしておこう。
一番隊
隊長・山下彦三郎
門番さんこと彦三郎率いる300人隊。主に弓隊である。
二番隊
隊長・黒沢大吾
Mrフルパワーこと黒沢大吾率いる300人隊。主に前衛の槍隊である。
元々、俺の家の護衛の1人だったが俺が生まれるときに顔が怖くて成長に悪影響が出そうと言われ、クビになったという悲しい過去を持つ男。体は二メートル近くあり、パワーがやばい。性格は優しく、趣味は野鳥観察。
三番隊
隊長・蓮沼常道
俺の軍の軍師的存在。だが俺は平田三位に免許皆伝を貰っているのであくまでも相談程度、ということになりそうだ。主に物資の補給や予備隊をまとめる100人隊。隊長本人は戦闘が苦手。
残りの100人は俺の直属。この中から俺の近臣(雑用)の2人を紹介しよう。
まずは
次は
「って感じで大変なんだよ」
「お疲れ様です。ご主人様。というかなんでそんな問題児を側付きにしたんですか?」
夕食を食べながら祈に俺の愚痴を聞いてもらっている。祈はそういう話でもちゃんと聞いてくれる。
「あー、年が同じだったからかな。やっぱ同い年くらいが話しやすいじゃん」
「スペックも大事だと思いますけど」
「まあそうだよな。あともう一人くらい見つけてこようかな?でも仕事自体は回ってるんだよな」
「そうなんですか?」
「ああ、天弥はともかく氷雨は仕事自体は出来るんだよな。コミュニケーション取れないこと以外は文句なし」
「ご主人様はその氷雨のことをずいぶんと評価しているんですね」
「まあ、正当な評価だと思うぞ。仕事できるし、ついでに可愛い。側付きには丁度いい」
「……可愛いんですか?その子」
「ああ」
「へぇ?ふーん」
「ん?……あ!?」
はっ!?しまった!?前世でラブコメ漫画読みまくってたこの俺が女の子の前で他の女の子を誉めてしまった。これはNGな奴だ……!!えーとこういう時は……
「も、もちろん祈の方が可愛いよ!」
「へぇ?別に何も言っていませんが?」
そう言って食器をもって台所へ行こうと立ち上がる祈。俺はそれを慌てて追いかけ、食器を洗う祈の横に並び、それを手伝う。
「珍しいですね?ご主人様?」
「いや、あの、えっとそう!世界一可愛い祈の近くに居たくて!」
「絶対、今考えたでしょ?」
「は、はい。すみません。で、でも本当に祈の方が氷雨なんかよりずっと可愛いよ」
「そうなんですか?」
「もちろんさ」
「な、なら許します」
あっぶねー!!今日ほどラブコメ漫画読んでてよかったと思う日はねぇ!
「明日は家臣団の会議なんでしたっけ?」
「ああ、岩倉城の織田信安の所のスパイだった稲田大炊助という男が殺されたらしくて、そろそろ攻め時か?ってなってるっぽい」
「なるほど……ではそれがご主人様の初陣になりそうですね」
「ああ、かもな」
初陣か……今まで試合だったり、盗賊を殺したりは何回もしてきたけど戦というのはやっぱり違うものなのだろうか?母上の手紙にも初陣が見たいとか書いてあったな。
この時、俺は初陣はまだ先だと思っていた。だが、初陣はすぐそこまで迫ってきていたのである。
翌日、清洲城大広間にて信長家臣団の会議が行われた。だが、そこに家老の林秀貞、その弟の林美作守、さらには織田家臣団最強の男である柴田権六の姿はなかった。彼らがいないと会議にならないため待つことになった。
1時間ほど経過し、信長が見るからにイライラしだした頃、突如会議室に一人の兵士が乱入してきた。
「なんだ貴様!!会議中だぞ!!」
小豆坂七本槍の佐々孫介が怒鳴る。
「も、申し訳ありません!ですが、緊急のご報告が……!!」
「よい。申してみよ」
「ハッ!!報告です!!信長様の弟君の信行様が”弾正忠”を名乗り末盛城にて挙兵!!林秀貞、林美作守、柴田権六らが率いるおよそ3000の軍がここ、清洲城に向かって進軍しているとのこと!!」
まさかの裏切り。尾張の支配をめぐる兄弟喧嘩が始まる。
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