第21話 現代料理とリボルバー

 信長と父上の騒動から2年たった。

 その間、俺は伊賀の国で修業に励んだ。忍術の腕や身体能力は大幅に向上した。今では丹波とやりあって10回に3回くらい勝てる。え?全然勝ててないじゃんだって?そうなんだよ!!あいつマジ強い。もともと天才だってはやし立てられてたのにめっちゃ努力してどんどん強くなっていくんだよ!!努力する天才には勝てん。努力量は負けてないと思うのだが・・・今日も負けた。あいつ銃あたんねーんだよ!!なんかずっと一緒に特訓してるせいでだんだんお互いの動きがわかってきたんだけど、そのせいで俺の銃撃つタイミング見切られるようになってきたんだよね。これはマジで致命的でタイミングがバレると八割方避けられるんだよね。俺は明日は勝つ!!と心の中で誓い、帰路につく。


「おかえりなさいませ、ご主人様」

「ただいま、祈。ご飯なに?」

「本日の夕飯はカルボナーラとなっております」

「へえ、ベーコンなんて売ってた?」

「いえ、自作しました」

「え?すごいね!」


 本当に祈は頑張り屋で俺の食べたかった現代料理もどんどん作れるようになっている。


「いえ、それほどでも。でも少し撫でてくれると嬉しいです」

「わかった、わかった」


 祈の頭をなでてやると祈は少し顔を赤くしながらも満足そうだった。


「そう言えばご主人様、先ほど鍛冶師の方がいらっしゃってあとで工房の方に来るようにと」

「ん?工房?明日に行くつもりだけど急ぎの用事かな?」

「何かできたとおっしゃっていました」

「できたって!?ちょっと行ってくる!ご飯までには戻るよ!」


 俺には思い当たるものがあった。俺の工房では俺が設計図を描き、それを鍛冶師さんが作る。というシステムでやっている。俺も一時期は鍛冶の方もやっていたのだが俺はあまりそっちの才能がなかったようだ。結局はプロの鍛冶師に任せて俺は設計だけすることに落ち着いた。かといって俺が鍛冶をしたのがまるっきり無駄だったというわけでもなく、鍛冶をすることで製造が不可能な形などもわかるようになった。それまでは絶対無理な設計図とかあったしね。

 そして今俺が設計して鍛冶師さんに頼んでいたのは俺の前世の相棒である”リボルバー”である。4歳くらいの頃、作ろうとして諦めたやつだ。あの時はシリンダーとそれを回すからくりができなかった。しかし今回は違う。作ったのはこの道のプロの鍛冶師さんで設計図はあの頃とは銃の構造の知識や鍛冶についても学んだ銃マニアのこの俺だ。これまでもリボルバー制作をしたことがあったがすべて失敗。だが今回はそれまでの失敗を生かした自信作なのである。俺の愛するリボルバーのことを考えると自然と工房への足取りも軽くなっていた。


俊兵衛しゅんべえ!できたって?」

「お頭!できましたよ!今回は自信作でさぁ」


 そういって布に包まれたものを差し出してくる。


「開けてみてくだせぇ」


 そういわれ包みを開く。

 するとそこには銀色に輝くリボルバーの銃身が!!

 だがまだだ。喜ぶのはまだ早い。見た目だけなら4歳の時でも作れたはずだ。俺はわくわくする気持ちを抑えつつ銃をじっくりと眺める。そしてハンマー(リボルバーの後方についているレバー)を引くとシリンダーがカチャと音を立て左に倒れる。動作は完璧だ。


「外に出て、撃ってみていいか?」

「もちろんでやす」


 外に出て、シリンダーに弾薬を装填する。そして狙いを定め、引き金を引く。

 パァァーーン!!

 銃の後方にあるハンマーを引き、再び狙いを定める。そして引き金を引く。

 パァァーーン!!

 もう一度。

 パァァーーン!!

 もう一度。

 パァァーーン!!

 もう一度。

 パァァーーン!!

 ラスト。

 パァァーーン!!

 装弾数である6発、すべてが問題なく発射された。


「すごい!!これすごいよ俊兵衛!!」

「うす!」

「本当によくやってくれた!!ありがとう!!」

「うす!!」


 これはすごいことだ。この機構かできればDENIX M1サブマシンガンなんかも作れるようになるかもしれない。そんなことに浮かれていると俊兵衛がさっきの的をもってきて話しかけてきた。


「お頭、これ」


 見るとすべて真ん中を狙ったはずの弾丸は上下左右にそれていることがわかる。しかも1発は的に当たってもいないようだ。ちなみにいつも俺が使用している銃の場合ほぼ真ん中に全弾当たる。


「ちょっと精度が悪いな」

「うす」

「よし、問題点は明日にでも話し合うことにして今日はお祝いにしよう。完成祝いだ。祈が飯用意してくれてるから食べたら工房に行くよ。俊兵衛は酒でも用意すれば?俺は飲めないけど」

「うっす!!」


 俊兵衛が目を輝かせている。そうだった。こいつ酒癖悪いんだった。だが今日はこのリボルバーに免じて抱き着くぐらいまでは許してやろう。キスしようとしたら殴るがな。



「おかえりなさいませ、ご主人様。鍛冶師さんの用は終わりましたか?」

「うん、無事終わったよ」

「何か嬉しいことがありました?」

「え?わかる?」

「はい、結構わかっちゃいます。今日、忍者学校から帰ってきたときは今日は丹波に負けた。クッソー。明日は絶対勝つ!って顔に書いてあったんですが、今はすごく嬉しそうな顔をしていらっしゃいます」


 え、こわ。そんなわかる?俺そんな顔に出たりとかしない方だと思ってたのに。いくら付き合いが長いとはいえさすがに恐怖心を抱くレベル。


「え、こわって思ってるでしょ」


 え、こわ……


「それで、何があったんですか?」

「ああ、これが完成したんだ。食事の時に詳しく話すよ」


 手で銃のポーズを見せると祈は納得したようにうなずき、


「ではすぐに用意します」


 そう言い、パスタを皿によそい、机に並べていく。


「「いただきます」」


 めっちゃうまい。あらためてとんでもない完成度だ。この時代にはクックパッドもパスタが乗っているレシピ本もないのだ。俺が一度作ったり、口で伝えただけにもかかわらず現代の料理を再現する祈はまさに天才なのだろう。

 あっという間に食べ終えてしまった。


「ふう、ごちそうさまでした。おいしかったよ」

「ありがとうございます。それでその銃というのは?」


 祈も気になっていたようだ。


「これなんだけど。ついに連射ができるようになったんだ」

「ほぉー!念願の、ですね!」

「ああ、ほら、こんな感じでここに弾薬を装填するんだ」


 さっき渡されたリボルバーを祈に見せる。祈は興味深そうにリボルバーを眺めている。


「これで来週、丹波さまにリベンジですね!」

「ああ!あいつのあの余裕ぶった顔面にペンキ弾叩き込んでやる。あ、そうだちょっと俊兵衛と完成祝いしてくる。あんま遅くならないようにするけど・・・」

「わかりました。工房ですか?あとでフライドポテトでも持っていきます」

「マジ?ありがと!」


 そしてその日は俊兵衛と日が変わるくらいまで飲み、完成を祝った。俊兵衛は相変わらず酒癖が悪く、結局2発殴った。


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