第4話 チョコバナナマフィン
今日は日曜日だ。
昨日は茉莉子さんのお菓子教室から帰ってモンブランを冷蔵庫にしまった後
シャワーだけ浴びて寝た。
少しゆっくりめに起きた僕は母さんにモンブランを見せて優斗の話をしたらとても喜んで目をキラキラさせた、ように見えた。優斗人気だな。
「待ちきれないから10時くらいにお父さんとお茶にするわ。清人と優斗さんのを半分ずついただこうかしら、優斗さんにお礼を言っておいてね」
「うん」
「あっ、それとね清人。バナナを買ってたんだけど誰も食べないから傷んできたのよ、何か作れないかしら?」
「ああ、それじゃあチョコバナナマフィンを作るよ」
僕は朝食を終えると早速チョコバナナマフィンに取り掛かる。
マフィン型を出して、型紙を入れておいて、材料は薄力粉、バター、きび糖、卵、
ベーキングパウダー、塩、バナナ、チョコチップとチョコレート。
まずはバターと卵を常温にするのだが9月になってもまだ部屋の温度が高いのでバタ―は出しておいたらすぐに柔らかくなりそうだ。後は薄力粉とベーキングパウダーを混ぜてからふるいにかけておく。
ベーキングパウダーはアルミニュウムが入っていないものを使う、最近では入っていないものが出回るようになったけど日本って案外こういうのに無頓着なんだよね。
さて、材料がそろったから始めるぞ~と思ったら、
「お兄ちゃん、なに作るのぉ」と藍が片手に牛乳の入ったコップを持ちながらやってきた。片手に牛乳でも絵になる藍は僕から見ても可愛い。シスコンではないけどな。
「チョコバナナマフィンだよ」
「あっ、それってバレンタインの時に教えてもらったやつ? あれ美味しかったよね」
「そうそれ、藍が友達にあげるからって特別に教えてもらったやつ」
「私作れるよ、私にやらせて」
「いいよ」
僕はボールに入れたバターをヘラで少し
「ここちょっと緊張する」
そう言いながら、藍がハンドミキサーを高速にしてギュインギュイン回すとバターが飛び散る飛び散る。
「きゃー、飛び散ってる~」
「気にしたら負けだ、次、きび砂糖をいれるぞ」
僕はきび砂糖と塩を一つまみボールに入れる。砂糖を入れるとバターが飛び散るのをあきらめてされるがままになる。
藍はなおも高速で回し、バターが空気を含んでボワッボワッになるまで混ぜた。
「溶き卵を少しずつ入れるから混ぜ残しがないように」
「うん、手を抜くと分離しちゃうもんね、頑張る」
なおもギュインギュインと回す藍、容赦ない。
「いい感じだ、それじゃあ粉を入れてヘラでさっくり混ぜよう」
バターのボールに薄力粉とベーキングパウダーを混ぜたものをふるいながら入れ、
ヘラで切るように混ぜたあとさっくり底から回して混ぜ、最後はこすりつけるように混ぜる。
「滑らかになったよ、混ぜ残しもないし、ここでチョコチップと潰したバナナを入れて混ぜるんだよね」
「そうそう、オーブンは170度で余熱だ」
バナナとチョコチップを混ぜた生地をマフィン型に入れていき、割ったチョコレートをグサグサ差し込む。その上からスライスしたバナナとチョコチップを飾りにのせて30分焼いたら出来上がりだ。
「よし、後は焼けるのを待つだけ。バレンタインに一度作っただけなのによく覚えてたな、藍はお菓子作りの才能があるよ」
僕は焼いている間に道具を洗ってしまおうとシンクでじゃぶじゃぶ朝食の食器と共に洗いながら話をする。
「えへへへ、優斗さんに教えて貰ったんだもん、忘れるわけないでしょ。
それより、バレンタインで思い出した。あはははは、お兄ちゃんが高2の時のバレンタインの話し、あれ最高だったわ」
あーーーー、あの黒歴史。
「なんだよ今頃、もう忘れてください。お願いします」
「それがね、
僕はびっくりして洗っていた食器を取り落とした。
「えっ、なんだって、千早が」
千早は幼稚園の頃からの幼馴染で高2まで一緒だった親友だ。親の転勤で地方都市に引っ越したのだがその後は音沙汰がなかった。バレンタインの黒歴史はこの親友絡みの話なのだ。
「戻ってきたんだ、なんで僕に連絡してくれないんだろう、ていうか、なんで藍が知ってるんだ?」
「あー、私がやってるSNSのフォロワーなのよ千早くん」
「えっ、いつから? お兄ちゃん、聞いてないよ」
あれっ、藍のフォロワーに千早って名前のやついたっけ? 僕のチェック漏れか?
「いう訳ないでしょ、いちいち」
「お兄ちゃんの親友だよ、教えてくれたっていいじゃないか」
「千早くんが教えなくていいっていうんだもん。でも安心して千早くんとはお兄ちゃんの話しかしてないから」
「えっ、どういうこと?」
「私がSNSに載せてるスイーツがお兄ちゃんや優斗さんの手作りだっていう話を書いてるじゃない? あれ? お兄ちゃん見てるよね?」
あちゃー、僕が藍のSNS見てるのバレてたんだ。
「ごめん、見てる」
「で、千早くんにあれこれ聞かれるもんだから、ついいろいろ話ちゃって」
「それで?」
「何だか知らないけどこっちに転職して引っ越して来たんだって」
「?????」
理由は分からないけど、とにかく千早が戻ってきたのは分かった。
ピーピーピー
僕はまだいろいろと藍に聞きたかったのにマフィンが焼けたとオーブンが知らせてくる。
「あっ、お兄ちゃん、焼けたよ~、美味しそう」
藍は千早のことなどすっかり忘れたようにオーブンから焼きたてのマフィンを取り出していた。
つづく
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