第5話 未来の俺②

「本当に問題となるのはここからです。

 フミヒロ様が失脚すると、井藤政権時代に築き上げたもの全てが崩れ始めます。

 それまで成功していた経済政策をどういうわけか大転換し経済は失速。

 たった一年間でGDPは二十位以下。株価は大暴落。景気は急激に下降します。

 さらに失業率が急上昇、犯罪率や自殺率までもが上昇し、国内には沈鬱とした閉塞感が漂います。

 また、外交政策も悪転換し、強固だった外交安全保障は崩壊。我が国はいつ侵略されてもおかしくないような危機的状況にまで陥ります。

 それはまるで第二次世界大戦直前にでも戻ったかのような様相。我が国の未来は一体どうなってしまうのでしょうか......!

 そしてついに...運命の二〇六六年。あえなく某国の侵略を許し二度目の敗戦。我が国は国名なき国家へと成り下がったのです」


「う、うん......」


「それもこれも、すべては貴方の失脚に起因しています。すなわち.....貴方がハニートラップなんぞに引っかかり制服プレイなんぞに興じたからです!貴方のオンナ好きが我が国を亡国に陥れたのです!」


「えええ??」


「だから私がこうして十四歳の貴方のもとへ時空を超えてやって来たというわけです!」


「ええっと、話が見えないんですが......」


「ようするに!貴方は我が国の歴史に残る名宰相になったと同時に、オンナ好きが災いして我が国を亡国に追いやってしまった大戦犯なのです!

 つまり!すべての原因はフミヒロ様、貴方のオンナ好きにあるのです!」


「で、でも一番悪いのはハニートラップを仕掛けてきたほうなんじゃ...」


「甘い!甘いですよ!敵からの工作・謀略はつねにつき物です!結局は貴方の異常なオンナ好きを治さない限りは我が国の平和は保障されないのです!」


「そ、そうなるのか?」


「そうです!」


「はあ」


「そして、貴方の異常なオンナ好きと性癖の原因は、さかのぼれば思春期の時代の不登校にあるのです!

 貴方は果てしなき性欲を持ったとんでもないドスケベ怪獣であるにもかかわらず思春期にマトモに女子と関われなかった。それが大人になってからの貴方の性癖を歪めてしまったのです!」


「そ、そんもんなのか」


「貴方の場合は、です!これは様々に検証・分析・計算・シミュレーションを繰り返した結果導き出された結論です!」


「オンナ好きを計算してシミュレーション??」


「ちなみに、このままいくと貴方は中学のみならず高校もほぼ不登校で過ごすことになります」


「えっ、俺そんなにこじらせちゃうの?てゆーか、そこからよく総理大臣になったな」


「それは驚嘆すべき素晴らしいことだと言えます。

 しかしフミヒロ様。貴方の場合、それは良くなかったようです。

 勉学がズバ抜けていた貴方は、高校不登校から高認試験をパスし、そこから余裕で東大に合格。

 大学はある程度は真面目に登校していたようですが、優れ過ぎた貴方には退屈だったようです。

 かといって遊びなどには目もくれず研究に没頭します。

 やがて大学を卒業すると、国家公務員試験を満点合格していた貴方はいったん某省庁に入省します。

 と、言えるのはここまでです。これ以上貴方の未来の事を詳しく説明してしまうと、逆に貴方の未来に悪影響を及ぼしかねませんから」


「いや、すでにけっこう教えてもらっちゃったけど......」


「はい。ちょっと口がすべりました」


「口がすべるアンドロイドなんかいるの!?」


「そういうふうにプログラムされております」


「どういうふう!?」


「私は、世界ではじめて『より人間味のあるアンドロイド』として完成されたアンドロイドなのです」


「は、はあ」


「完全こそ不完全。不完全こそ完全。それが人型アンドロイドの究極」


「よくわからないんだけど......と、とにかく、俺はどうすればいいの?」


「私が帯びた任務は、未来の貴方の歪んだオンナ好きを正すため、その根本原因たる思春期の貴方のもとへ行き、貴方を正しく成長させることです。

 それこそが、極秘セクシープログラム

〔美少女アンドロイド田網袮絵子のお色気救国大作戦!〕

 です」


「......はっ??」


「というわけで、本日から私はこの家でフミヒロ様と寝食を共にします」


「えっ」


「どうぞよろシコ」


「えええー!?」

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