第2話 田網袮絵子

 さて......。


 リビングのソファーに女の子が座り、斜向かいに俺が腰かける。


「......」


 沈黙が部屋をつつむ。

 青髪の女の子は無表情のまま端然たんぜんとして動かない。


「......」


 てゆーかなにこれ?

 わけがわからん。

 と、とりあえず整理しよう!

 

 まず、玄関のドアを開けたら宅配便らしきダンボールの箱がありました。

 つぎに、ダンボールから知らない女の子が出てきました。

 ......以上。


(いやいや全然わからん!!)


 心の中で立ち上がって叫んだ。

 と同時に、頭の中でにわかに暗い霧がたちこめる。


(これって、なにかヤバい事件に巻き込まれたりしていないか?)


 どう考えてもオカシすぎるしアヤシすぎる。

 それなのに、なんで俺はあっさりとこの女の子を家に入れてしまったんだ?


(警察に連絡するか......?)


 そうだ。

 警察に通報すべきだ! 

 どう考えったってこれはヤバすぎる!

 でも......


(とりあえず、話ぐらいはしてみても......)


 そう思ってしまったのには理由がある。

 それは女の子が......

(めちゃくちゃカワイイ!)

 からだった。


 改めてよく見てみると、信じられないぐらいに可愛い。

 凛としながらもうれいのある端麗たんれいな顔。

 怜悧れいりな瞳はどこか冷たそうだけど吸い込まれるような美しさ。


 それと......。


 白く細い首から視線を落とせば...服の上からも充分わかる豊かなハリがふたつ。

 でも、締まるところはきゅっと締まっていて、体全体は細い。

 しかし、スカートからのぞく脚は絶妙にほどよくムッチリしていてイヤでも目がいってしまう。


(正直、かわエロイ......)


 ダンボールから出てきた得体の知れない女の子にもムラムラしてしまう俺。

 このとき俺は、中学二年生男子の果てしない大海原のような性欲を呪った。


「さて、そろそろエロい妄想は終わりましたか?」

「えっ!い、いや、あの...!」


 なんの前触れもなく女の子が唐突にヘンなことを言い出したもんだから、俺はしどろもどろになってしまう。(実際エロイ目で見てたし...)

 だが、女の子は相変わらず取り澄ましたままだ。


「......目と耳にややかかるぐらいの黒髪。自信なさそうな伏し目がちの眼。不登校らしくティーシャツから覗くまっちろい肌と痩せた体。データで確認していたとおりですね」


「えっ??」


「改めまして、私の名は田網祢絵子たあみねえこ。何卒、よろしくお願い申し上げます。とはいっても、フミヒロ様。貴方は今、私に対して聞きたいことが山のようにあるでしょう」


「あ、まあ、はい......」


 相手の奇妙な揺るがなさに、俺はいささか気圧されながら応えた。


「まず何よりも一番に気になるのは、私が何者か?ということでしょう」


「それは、はい」


「私は、我が国を救うため未来からやってきた愛国美少女アンドロイド〔69ーDー74〕」


「み、未来からやってきたアンドロイド!?君が!?はあ!?」


「信じられませんか?」


「信じられないよ!」 


「そうですねぇ。では......」


「え......」


 なんと、田網袮絵子はおもむろにもぞもぞと上半身の服を脱ぎ始めた。

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