第24話 中学三年・十一月

 

 寒さも一段と強くなり、期末テストの週間へと突入した。


 いよいよ、中学生活も終わりに近づいているな。うちの学校は、中三の二月の期末テストがないので、これが最後の期末テストだ。そのあとは、一月に実力テスト。つまり、中学のテストは残すところあと二回というわけだ。とっとと終わって欲しいものだ。寂しさなど、一欠片ひとかけらもない。


 いや、一欠片もというのは、ちょっと語弊があるな。例えば――。



『井神ー、数学の徹底演習テキストのp.142の問題が全然意味不明。早く解き方教えて』


 夜、勉強していると、文芸部のグループLINEに、河合かわい美菜みなからそんなメッセージが入る。名指しとは、まったく光栄この上ない。俺は棚からテキストを出して、該当のページをめくる。


「ああ、これね・・・・・・」


 俺は白無地のノートに、解答方法をさらさらと書き記して、写真をとり、グループLINEにあげる。


『これでいいか?』

『井神サンキュー』


 スタンプで応答して、俺は自分のテスト勉強に戻る。


 数十分経った頃、ぽわっ、という通知音がする。見ると今度は、河合かわい咲良さくらだった。


『理科の問題、ギブ。井神くん、分かる?』

『何ページ?』

『テキストのp.173 問題5』


 丁度、さっき解いていた問題だ。ということで、これには即返信する。


 いつの間にか、夜十時半を回っていた。


『なんかさ、今回の期末、範囲広くない?』


 美菜が半ば愚痴のように、投稿すると、瀬奈せながすぐに応じる。 


『うん。なんか、中学最後の期末だー、て先生たち、変に気合い入っているよね』

『だよな。憂鬱ゆううつなのは、これ、内申点が高いらしいからな』

『嫌だなあ・・・・・・』


 咲良が、深くため息をついている、キャラクターのスタンプを送信する。残りのメンバーも、次々と同意を示すスタンプを送る。


『つーかさ、一月に実力テストあるから、それで頑張ればよくね?』

『美菜ちゃん、そういうこと言っていたら、実力のときも同じ言い訳して、ずるずると勉強せずに、東高に落ちるよ』

『ぐっ・・・・・・はーい』


 いくつかのやりとりを交わしたのち、瀬奈の『おやすみなさーい』という夜のあいさつを皮切りに『おやすみ』『良い夢を』と各々、メッセージを残し、今夜のグループトークは終了する。


 試験期間に入ってのち、毎晩ずっとこんな感じだ。最後の期末テストだからか、いままでになく、トークが活発だ。


 テストは嫌だけれど、このグルーブの毎晩の騒々しい感じは、割と気に入っている。俺だけかもしれないけれど。人に解説するのが、自分にとっての勉強になるんだな、とか当たり前のことを実感したりする。


 でも、やっぱりテストは、早く終わって欲しいものだ。いや、期末だけじゃなくて、高校入試も、とっとと過ぎ去ってくれねえかな。

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