第5話 メディの要求

レピスはマインスパイダー討伐の準備をする為にフリース通りを訪れていた。

 フリース通りは主に雑貨や日用品などを販売している商店が多く連なっており、スディラスに暮らす人々を支えている。

 その中で薬剤を多く取り扱っているポーション店にレピスはヒールポーションの他にあるものを探しに来ていた。

「ネロースポーション……ですか?少し確認してきますね。」

 そういうとポーション屋の店主は店の奥へと消えていった。

 暫くして店の奥から出てきた店主は申し訳なさそうに告げる。

「申し訳ありません、只今在庫が切れておりまして……。」

「そうですか……ではヒールポーションを3つほど……はい有り難うございます。」

 レピスは回復薬を受け取り店を出る。

 その後も複数のポーション店や薬品を取り扱う店に赴くがどこの店もネロースポーションを取り扱っていなかった。

 しかし最後に訪れた薬品屋の店主がとあるポーション屋を教えてくれた。

「そうだな……ネロースポーションならあの店にあるかもしれないな。だけどなぁ……。」

「?なにか問題があるのですか?」

 レピスの問いに店主は苦笑いしながら答える。

「その店主は調合士なんだが、悪人ではないんだけど少し変人でね……、まぁ一度行ってみれば良い。腕と品揃えは確かだよ。」

 レピスは店主に礼を言うと教えられた店に向かう。

 暫く歩くと教えられた場所に着いたのだが、

「本当にここで合ってるんだよね?」

 そこにあったのは外見がボロボロで人の気配が感じられない、廃墟寸前の建物。

 レピスは周りを見渡すが場所は間違っていない。意を決して建物の中に入るとそこは怪しい匂いが充満したポーション屋だった。

 所狭しとポーションやポーションの材料が沢山並んでいる店の奥にシーシャらしきものを吹かしながら女性が座っている。

 その女性はレピスに気が付くと口が裂けるような笑顔で話しかけてきた。

「おやおや、これは珍しいお客さんだ。このメディ商店になにか御用かな?」

「あ、えっとこの店でネロースポーションを取り扱っていると聞いて来たんですが……?」

「確かにネロースポーションなら取り扱っているけどね……この値段だよ。」

「10000ロディ!?」

 レピスは余りの値段に驚いてしまう。

「最近は余り材料が手に入りづらくてねぇ……中々数が揃えることが難しいんだよ。」

 そう言いながらレピスを舐めるように見ていたメディは何かに気付くとレピスに問いかける。

「そうだなぁ、ネロースポーションを譲ってもいいけど、対価が欲しいな。」

「対価……ですか?」

「そうだよ、この世には無料タダより怖いものは無いからね。そうだねぇ……例えば体液とか。」

「た、体液ですか!?」

 思わぬ提案にレピスは驚きの声をあげる。

 体液と言われるもネロース薬の値段は10000ロディ、レピスには到底払えそうにない。

 悩んでいるレピスにメディは提案する。

「なに、体液と言っても唾液程度でいいんだよ、ちょっとのね。」

 唾液といえど赤の他人に渡すのは抵抗はある、しかし背に腹は代えられなかった。

「わ、わかりました……、唾液ぐらいなら……いいですよ。」

「キヒヒ、物分かりがいい子だ、じゃぁここに入れてくれ。」

 レピスは差し出されたガラスの管に顔を赤らめながら唾液をいれる。

 唾液の入ったガラス管を受け取るとメディは満足そうな顔をしながら店の奥へ消えていく。

 暫くしてメディは大きな木箱を抱えて戻ってきた。

 目の前に置かれた木箱の中を恐る恐る覗き込むレピス。

「これは……ネロースポーション!?しかもこんなにたくさん!?」

「キヒヒ、これは礼だ、好きなだけ持っていきな。」

「そ、それじゃあ……。」

 レピスは木箱から数本ほど取って鞄に入れる。

「えと、あ、ありがとうございました!」

 礼を言うとレピスはそそくさと店を出る。

 その背中を見送りながらメディは笑う。

「キヒヒ、まさかこんな逸材がいるなんてねぇ……、そういえば名前を聞き忘れてたね。まぁいいさ、またいつか逢えるだろうさ。」

 メディの手には発光するガラスの管が握られていた。

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