第2話
「リリ、こんなとこ私本当に入っていいの?」
歩くこと十数分。とても豪華な城に着いた。門番がいたけれど私を見たあとリリを見て警戒を解いてくれた。そして申し訳ありませんと言わんばかり腰を曲げた。本当に何なのだろう、この扱いは。リリに対してしているのではと一瞬考えたが、頭の方向はやはり私に向いている。何故なんだ。そろそろわかるだろう、雰囲気的にもきっとあの方とやらに近づいてきている感じがするから。
「セレス様、この部屋にお入りください。あの方がお待ちです」
やっぱり着いたみたいだ。扉一枚挟んでいるけれど何か感じるものがある。少しこれに近づくのが怖いけれど、これが何なのか知るにもこの扉を開けなければいけないだろう。
「ありがとう、リリ」
身に染みたノックを3回。返事が返ってくるのを確認してから扉を開ける。しっかりと扉を閉め深く礼をした。
「そんなことをしないでくれ、セレス。詫びたいのはこちらの方なのだから」
少ししか聞いたことないはずなのにすごく落ち着く。不思議な感覚がした。声をかけられ頭を上げあの方と目があった。その瞬間———
「「———⁉︎」」
胸を握られたような感覚が私を襲った。それは私だけかと思ったが、あの方も同じような反応をしていた。同じ様に胸の辺りをギュッと抑え、お互いに目を離すことができなかった。そんな様子を見ていたリリが私とあの方との間に入った。その途端呼吸が楽になり息切れによる動悸なのか、さっきの謎の現象による動悸なのかわからなかった。
「———ッよ、よくきてくれました、セレス。わた、私の愛し子。私の名前はラーレ。この精霊界の王です。ですがあなたは私の愛し子。私はあなたには逆らえません。どうぞ好きな様に呼んでください」
あの方、もといラーレさんは予想した通り精霊界の王らしい。動悸もだんだんと落ち着いてきた。けれど、真正面から見ると刺激が強すぎる。そもそも、私が愛し子って何?
「ら、ラーレさん。愛し子って何ですか?」
知りたいことがありすぎたため、一つずつ質問していくことにした。
「愛し子とは、動物などでいう番の様なもの。先ほど私とセレスが感じていたあの感覚があなたが愛し子である証明です。愛し子は自分で決めるわけではなく精霊として生まれた瞬間、愛し子との結びつきができます。魂よりももっと奥深く、研究しきれないほどの奥からの結び付きが。精霊としての力が強ければ強いほど愛し子との結びつきが深くなる事がわかっています。私は精霊界の王、だからきっと、私とセレスの結びつきは果てしないほど深くあります」
「私はラーレさんと初めて会った時こんな感覚には至りませんでした」
私はラーレさんと初めて会った時のことを思い出した。
初めて出会ったのは数日前。
「本当に何であなたは生まれてきたの?」
いつもと変わらない暴言。聞き飽きてどうも思わなくなってきた。そんな私を女達は面白く思わなかったらしい。
「そんな態度をとって、もう一度分からせてあげなければいけないみたい。ね、母様?」
「えぇそうね。では、アレを持ってきて?」
「わかったわ、母さま」
いつも発言をし始めるのは姉の方。何故こんなにも恨まれているのはわからない。きっと、あることないことを母親に吹き込まれているのだろう。私がいるせいで、隠れて生活をしなければいけないのだとか。
本当は今すぐにでもここから逃げ出したいけれどでも、大人しくしていたほうが傷は少なくて済む。
「持ってきたわ母さま。すごく熱いわ」
「えぇ、気をつけなければいけないわね、死んでしまったら大変だから」
そう言って妹の方から渡された熱い何かを義母が持った。その間に慣れた手つきで私を拘束する姉。拘束された私の服を脱がす妹。冷静に判断できるけど実質頭の中はパニック状態。前の時よりもはるかに熱そうで、本当にあれで火傷を作られたら私は死んでしまうのではないかと思うぐらいに。熱いものがだんだんと背中に近づいてくるのを感じる。
「———ッあぁあああああついあついあついああぁああ‼︎‼︎」
背中にジューッと押しつけられ肌が溶けていくのを感じた。今までに味わったことのない痛み。自然と目から涙、鼻から鼻水、口から涎がダラダラと。そんなことを気にしているほど余裕はなかった。失神してしまう、そんな時
「痛い痛い!!」
「何よこれ!何から攻撃されているの!?」
「母さま!!痛いよぉ!!」
そんな声が聞こえたと思ったら背中の痛みが少し消えた。何故だろう、そう思って振り返るとそこにはいつも見守ってくれている精霊達の姿があった。
「あなた、たち。どう、して?」
「申し訳ありませんでした、あなたに酷い思いをさせてしまって。私たち精霊は王の許可がない限り人に危害を加えられないのです」
混乱している中そんな説明をされたのを覚えている。そのあとは水で火傷を冷やしてもらって、不思議な力を使って軽く治療をしてもらった。
その1日後の話。いつも通り洗濯をしようと外に出た時、後ろから急に話しかけられた。
「昨日まで本当に申し訳ありませんでした。あなたのことを見つけられないでいて、そのせいであなたにこんな酷い思いを。」
初対面なのに深々と謝られ何か責任を感じていたラーレさんに私は声をかけた。
「あなたにとって私が何か知りませんが、私はこの生活でも心の支えになってくれる子達がいるので大丈夫です。ですから、そこまで責任を感じないでください」
「———ありがとう、ございます。準備しておいてください。きっとあなたを迎えにきます」
それが私とラーレさんの初対面だった。
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