虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子なんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
第1話
セレス・バートレイ、歳は18。4歳の頃に母が亡くなり、父がしばらく家を留守にした。その後帰ってきたと思ったら隣にいたのは三人の女子供だった。1人の女は、父の愛人。私の母と父が結婚する前から居た愛人。母はそれを了承して父と結婚した。私が生まれるより前に父は愛人との子供をつくった。2人ほど。しかもそのうちの下の姉は、私とそう変わらない歳。それほどまでに愛人を愛していたが、政略結婚には逆らえず一緒にはなれなかった。だから、母が病で亡くなった時嬉々として、愛人を家に招いたのだろう。
そこが私の人生の変わり目だった。父ときた三人組は、私を使用人のように扱った。背中に火傷を負わされたこともあった。だけど私は、ずっと近くで見守ってくれていた精霊たちが心の支えだった。精霊は、私の母にも見えていて精霊たちはすごく母に感謝しているようだった。その恩を返すかのように精霊たちは私に仕えてくれた。
そして、この間のこと。いつも寄り添っていた精霊たちが三人に攻撃を仕掛けた。いつもはただ見守っていただけだったのに。そこからは話がすぐに進んだ。外に出て草むしりや洗濯をしていると、急に人が話しかけてきたと思えば自分は精霊だという。そのうち迎えに上がるから準備をして待っていて欲しいと。そう言ってその謎の精霊は去って行った。私は、そのことを身の回りにいた精霊に聞くと、「今はまだ言えないけれど、あのお方はあなたの救いになる」とだけ。いつも一緒にいた子たちの言葉を信じ私はその精霊が来るのを待った。待つ中でいつも一緒にいた精霊たちが何故か人型になったり、あの三人からの危害が無くなったりと不思議なことが起こった。
そして今日、朝になって私の精霊たちが教えてくれたのだ。「あの方が今日迎えにくる」と。何時ごろ来るのかと聞くと、「セレスの準備ができたらすぐに現れる」とのこと。試しになけなしの荷物を持って外に出るとそこには、あの人の姿があった。すぐに出るかと聞かれたけど少し待ってというとじゃあ、あなたのすぐ横にいるリリに迎えを頼みます、といって去っていった。不思議な人だと思いながら私は彼女たちに別れを告げにいった。
「この家を出ます。今までお世話になりました」
精霊たちから話を聞いたところ、私はもうこの家には戻ってこれないらしい。精霊界?という精霊たちの世界で暮らすことをあの方とやらは望まれているらしい。胡散臭いにも程があったが、私とて早くこの家を出たくて仕方がなかったから、その船に乗ることにした。反対の声が三人から聞こえるけれど、聞こえないふりをして家を出た。この家は数少ないお母様との思い出が詰まっているけれど、あの人たちがいるのであればいらない。そもそも私のお母様がどんな人だったかなんて全くもって覚えていなかった。だからこの家に未練なんてないから、簡単に捨てることができた。
あの方とやらがいう通り、多分ずっと隣にいたであろうリリが門の外で待っていた。
「セレス様、お迎えにあがりました」
ずっと一緒にいたのに改まられて少しおかしな感じがして笑ってしまった。すっかり私もその雰囲気に乗せられてしまった。
「ありがとう、リリ」
そう言って差し出された手を取った。その瞬間、さっきまで見ていた景色が夢のように変わっていった。
「リリ、これは?」
「人間界と精霊界を結ぶ道を渡っております。普通の人であれば、もうこの時点で魂がその重みに耐えきれず、死んでしまいますが、やはりセレス様は特別な人で在られますので」
目を閉じて淡々と話すリリに少し不気味さを覚えながらも私は話を聞いていた。それにしても私が特別な人ってどういうことなのだろうと思いリリに聞く。
「その説明については、きっとあの方が説明してくださいます。さぁ、セレス様。もうすぐ見えてきますよ」
ずっと目を閉じていたリリが目を開け視線を私から移した。その視線の先を見ると霧が晴れていくように、不思議な世界が広がっていた。全体的に桃色の空気を纏っていて、すごく夢物語のような雰囲気だった。一歩足を踏み出すと、皆が振り向き私に対し跪いた。
「え、え!? リリ、これは?」
混乱する私を横目に、リリはひどく落ち着いていた。こうなることを予想していたかのように。
「皆さん、セレス様が困っております。姿勢を戻しなさい」
「リリ、この説明も?」
「はい、あのかたが説明してくださいます」
そうなんだろうと思いながら聞いたらやっぱりだった。勿体ぶらないで早く教えて欲しいのだけど。そう思いながら、精霊たちの街を私はリリに連れられながら歩いた。
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