第14話 三人の誓い、いつまでも一緒にっ!

 カースの返事を聞いて、ひとまず目の前の自己紹介もしていない魔法少女が、再び自傷行為に励むのを止められたことに、シンフォニーは一安心する。


 それだけでは、カースを止められただけでは何も本質的な解決にはなっていないのだが、目の前で暴れているワルイゾーの対処は、シンフォニーにとってどうしてもなさねばならないことではない。ワルイゾーには現代兵器が通用するし、既にそれを備えた部隊がこちらに向かってきているのだ。今更焦って、少女を苦しめてまで勝たなければいけない理由は、今のシンフォニーには存在しない。


 なるようになぁれと思いながらワルイゾーの元へと走って、その途中で先程落とした小鼓ハンマーを回収する。いくらでも線香を出せるインセンスや、どこかから出した五寸釘で何かをできるカースとは異なり、シンフォニーの魔法は小鼓ハンマーがなければそもそも発動すらできない。正確には、とっても弱くなった上で発動事態はできるのだが、小鬼くらいにしか効果がない魔法なんて、そんなものは無いのと大差ないだろう。自分が考えている内容が、対応部隊の人間からすれば的はずれなことを、シンフォニーは知らなかった。


 ポンポンポンッ!とハンマーを振るって、シンフォニーはワルイゾーの位置を調整する。いくら叩いてもダメージが入っていないとはいえ、その衝撃が完全に消されているわけではないので、上手に戦えばシンフォニーにもワルイゾーをふっ飛ばすことくらいならできるのだ。一つ難点をあげるとすれば、その過程で周囲の建物がボロボロになることだが、ワルイゾーが出ている以上それくらいのことは些事である。シンフォニーなさは少し違うと思うのだが、二井や母である結から繰り返し言い聞かせられたこともあり、いつの間にシンフォニーはそう思うようになってきた。



 そのまま戦い始めるシンフォニーに放置され、どうすればいいのかわからなくなってしまったのはカースだ。今の流れは確かに、一緒に作戦を考えて共闘する流れだったはず。それなのに相手はさっさと前に行ってしまって、信じると言わされたカースだけが残される。一体何がどうなっているのか。自分に出来ることは何かと考えて、カースは一つのことに気がつく。


「シンフォニー!ワルイゾーの体、一部、一欠片でもいいから手に入れて!それで何とかしてみせるから!」


 倒すことは、攻撃をすることは、今のままではカースにはできない。カースの魔法は呪いの力、魔法を媒介に、対象と対象の状態をリンクさせる力だ。条件が揃えば一方的に相手を終わらせてしまえる強力な力で、けれどその本領を発揮するためにはそれだけの条件を揃えなくてはいけない。


 その条件の一つが、呪いたい相手と何かしらの形で縁を結んでいること。友達だったり、家族だったり、関係性が深ければ深いほど、縁は強くて呪いやすい。ハマれば簡単に効果を出せる条件だが、そもそもそんなに強い縁を結んだ相手を呪うような事態はそうそう起きないし、ワルイゾーとカースの間にそんなものはない。


 それ以外でいちばん簡単なのは、呪う相手の一部を手にしていること。藁人形に髪の毛をつけるように、対象と対象を同一の存在と解釈できれば、それだけで十分呪いは通じる。今回のカースの狙いはこちらで、幸いなことに同一化できそうな都合のいいフライパンが、辺りにはいくつか転がっていた。


 傍から聞けばハテナが浮かぶような理屈だが、魔法少女の使う魔法なんてものはそもそもが理の外にあるもの。できると思えばできるし、できると思えなければできないのだ。そして今回、魔法少女であるカースができると思ったのだから、それは実際にできることなのである。


 そんな小難しいことを考えたわけではなく、お願いされたら答えないと!と単純に考えたシンフォニーがわかった!と元気に返して、さてどうしたものかと自分の小鼓を見る。ハンマーとして使ってはいるが、シンフォニーの小鼓は所詮打楽器だ。叩いたものを壊すなんて、本来の使い道ではないし、このワルイゾーには今まで傷の一つもつけていない。シンフォニーは、何も考えずに返事をしてしまう質であった。


 片手でクルクルとハンマーを回して遊びながら、どうすればいいかをシンフォニーは考える。ハンマーで叩いてもダメだし、さっきちぎれかけていた足も少女のものと共に治ってしまった。正真正銘傷一つない新品ピカピカのワルイゾーだ。


 そもそもフライパンってどうやったら欠けるのだろうとシンフォニーは考えて、そういえば熱して冷やしてを繰り返すと金属がもろくなるって習ったなと理科の授業を思い出す。熱くするのはインセンスの線香、その先端でどうにかするとして、冷やすのはどうしたらいいだろうと考えたところで、実行したら絵面が根性焼きになることに、シンフォニーは気付いた。魔法少女の戦い方ではないなと思って、シンフォニーは思いつきかけていたそれを却下する。


「ねえっ!二人はどうやったらフライパンが欠けると思う!?」


 さてどうしたものかと、シンフォニーは思考を振り出しに戻す。そしてすっぱり諦めて、他の人を頼ることにした。一人ではわからないことでも、ほかの人を頼れば何とかなったりするのだ。しかも今はそれが二人もいるので、きっとなんとかなるはず!とシンフォニーは楽観視する。


「伽羅、お料理とかしたことないからわからない」


 早速一人、役立ずが炙り出される。そもそも料理をしていてフライパンが欠けるようなことはそうそう起こることではないので、料理経験の有無なんて関係ないのだ。横で聞いていて、カースはそのことに突っ込みたくなる。


「なんか硬いものをぶつけるとか、そんな感じ!」


 普通のフライパンならともかく相手はワルイゾーだから、多分銃火器とかを使えば何とかなるかなと考えて、それなら結局今は待つしかできないのかとカースは落ち込む。せっかくの魔法少女としての初陣、魔法少女として活動する以上過程にこだわるつもりはなかったが、どうせなら収まりよく終わらせたかった。だからこそ早く何とかしたかったのだが、思いついたことが実現不可なのであれば仕方がない。運が悪かったと諦めようとしたところで、


「硬いもの……あっ!これならっ!」


 なにかに気がついたシンフォニーが小鼓ハンマーを構えて、無駄にきらびやかな柄の部分で殴り掛かる。ガリガリッ!と何かが削れる音がしてワルイゾーの新品ボディに一筋の傷が付いた。


 初めて傷をつけられたワルイゾーが、自分の傷を見下ろして泣きそうな顔になる。同じように自分の小鼓ハンマーを見たシンフォニーは、歪んでしまった装飾を見ながら、これ変身といたら直るかな?と現実逃避をした。


「えーっと、紫のあなた!これで大丈夫!?」


 装飾の溝に付いた、フライパンのコーティングだったものを指で拭って、シンフォニーはカースに見せる。カースからのお返事は、大丈夫!あとあたしはカース!と大変元気なもの。直前まで諦めかけていただけに、その喜びも一入だ。


 シンフォニーから削りカスを受け取って、その辺に落ちていたフライパンを拾うと、カースは少し時間を稼いでいてとお願いする。そうしてシンフォニーがワルイゾーの元に戻ったことを確認したら、フライパンとにらめっこの時間だ。


 何の変哲もないただのフライパンを、とっても危険なワルイゾーだと思い込むだけの簡単なお仕事。あたし、何やってるんだろうと考えて途中虚無りながら、カースは突然成功したことを感じる。


 手に持っているそれは、相変わらずただのフライパンだ。先程まであった削りカスがどこかに消えてしまったこと以外、何も不思議なところがないごくごく普通のフライパン。けれどもそれは、不思議な魔法の力によってワルイゾーとリンクしている。


 自分の魔法のことを疑わしく思いながら、カースはコンコンとフライパンを叩く。どこにでもあるような、普通のフライパンだ。その辺の店の商品で、こんなことに巻き込まれなかったら一般の家庭で使われていたフライパンなのだから、特殊なもののはずもない。


 そのはずなのに、カースがフライパンを叩いたのに合わせて、ワルイゾーから音が聞こえてくる。突然の異音にシンフォニーは首を傾げ、ずっとひとりで黙々とモクモク煙を焚いていたインセンスもそれを真似する。何もしていないようで実はずっとデバフをかけていたインセンスは、大好きな人の真似っ子をしたいお年頃だった。俗に言うミラーリング効果である。


 二人の魔法少女のことは一旦放置して、カースは手の内にあるフライパンを見つめる。よくわからないけど、魔法が上手く使えたことだけは理解出来た。そしてそれが上手くできているのなら、先程自分とつなげた時と同様、このフライパンへのダメージはワルイゾーに直接届くのだ。


 早速メッタメタにしてやる!とカースは物騒なことを考えて、ワルイゾーが暴れたことでところどころボロボロになっている床にフライパンを叩きつける。表面の塗装が少し剥げて、綺麗な曲面が若干歪んだ。それに合わせてワルイゾーもダメージを受けているが、それも誤差みたいな僅かなものだ。


「よくわかんないけど、そのフライパンをこわせばいいんだよね!?カース、私に任せて!」


 あたし、力弱すぎ!?魔法少女なのに……とショックを受けているカースに対して、何かを察したシンフォニーが声をかけて、そのフライパンを受け取る。それを軽く上に放り投げて、ボールのように小鼓ハンマーで打ち抜く。


 勢いよくフライパンが飛んで行った先にいるのは、当然のようにワルイゾーだ。先程までの不思議な衝撃、まだ耐えられるくらいのそれに油断していたタイミングで、突如襲ってきた強い衝撃。二回に別れてやってきたそれは、けれどもワルイゾーの強靭なボディを傷つけられるほどのものではない。


 ……それが、ワルイゾーの体であったならば。


 ワルイゾーの体は確かに頑丈だったが、それとリンクしているフライパンは、どれだけ頑丈であったとしても所詮フライパンだ。強く叩けば凹むし、酷使すれば柄だって取れる。元々人を攻撃するための道具ではないので、当たり前だ。


 シンフォニーによって叩きつけられたフライパンは、まず小鼓ハンマーに当たった時点で、ぐにゃりと歪む。歪んだまま、それが歪むだけのエネルギーを蓄えてワルイゾーにぶつかる。


 シンフォニーの小鼓よりも頑丈なワルイゾーのボディを相手に、ただのフライパンが無事で済むわけがない。ほとんど致命的なダメージを負っていたフライパンは、運命共同体であるワルイゾーの頑丈さに負けて三つに分裂した。それと同時に、カッチカチだったワルイゾーも無惨な姿に成り果てる。


「……なにこれ……」


 あまりにも予想外の事態に、カースは思わず声を漏らす。自分の魔法の効果だと言うのはわかるが、思っていたものとはあまりにも違ったのだ。カース自身が攻撃しても大した効果がなかった時点で、使い勝手が悪いなと我がことながら考えていた矢先、たった一撃でワルイゾーは倒されてしまった。しかも、明らかにオーバーキルな形で。


 なんかすごかった!と楽しそうに言うインセンスと、びっくりだねぇと呑気に笑っているシンフォニー。もっとこう、違う反応があるんじゃないかと思うカースだが、あほの子二人だから仕方がないかと諦める。


「あなたの魔法、すごいね!私はシンフォニー、魔法少女のエンパシー・シンフォニーだよ!よろしくね!」


「突然怪我した時はびっくりしたけど、すごかった。伽羅は、イノセンス・インセンス。仲良くしてくれたらうれしい」


 ワルイゾーを倒したことをあっさり流した二人が、まるで初めましてみたいに自分に話しかけていることから、まだ正体がバレていないことを察したカースは、このまま少し黙って見ようかと少し良くないことを考える。きっと、この二人は鈍いから自分の正体には気が付かないだろう。それなら、どこまでバラしていけば気付くのか確かめるのも面白そうだ。


「あたしはカオス・カース。さっき魔法少女になったばかりなの。わからないことがいっぱいで迷惑かけると思うけど、よろしくね、奏、伽羅ちゃん!」


 けれどもそうしなかったのは、単純に嘘をつくのが偲びなかったからというのがすこしと、このふたりならほとんどバラしても全然気が付かないかもしれないなと不安になったから。ちょっとしたおふざけで、いつまで経っても正体を伝えられなくなってしまうのは、カースは普通に嫌だった。


「よろしくね、カース!……あれ、なんで私たちの名前知ってるの?」


 案の定、全く気づく素振りを見せないシンフォニーと、不思議そうに首を傾げているインセンス。一人称や喋り方、その辺のものでわかってくれるかな、わかってくれたらうれしいなと考えていたカースは、自分の判断を内心で絶賛した。


「まさかこんなに気が付かないなんて……あたしよ、あたし。奏の一番の親友で、伽羅ちゃんのお姉ちゃんでもある縁呪。まったくもう、もっと早く気付いてくれればいいのに」


 縁呪が正体を明かせば、まず二人の少女に湧き上がるのは喜びだ。大好きな人が、自分と一緒に戦ってくれる嬉しさ。これからはもっと一緒にいられることに、二人は幸せな気持ちになる。


“……ということは、先程の自傷行為もまた、縁呪さんの行動だったわけですね。お説教とお話があるので、後ほど管理局に来てください”


 その喜びに水を差すように、大切なことを思い出させたのは通信機越しにつながっていた二井。音に指向性を持たせる技術によって、装着している魔法少女の耳を破壊せずに周囲と会話出来るスピーカー機能だ。突然自分の耳越しに会話をされて、シンフォニーはとてもびっくりする。


「たしかに、カースが縁呪ならいきなり危ないことをしたのも縁呪。伽羅がいなかったら大変なことになってた」


 危ないことしたらメッ!と、インセンスはカースに人差し指を向ける。大切な妹分に叱られて、カースはしゅんと凹んだ。


「まあまあインセンス、カースだって何も考えないでこんなことしたわけじゃないだろうから、まずは理由を聞いてみようよ」


 カースは私たちよりも頭いいんだし、きっと何か考えがあったんだよ!というシンフォニーのフォロー。昔からよく知る縁呪なら、まさか浅い考えであんなことはしないだろうという、強い信頼の込められた言葉に、カースは何も言えなくなる。


「……ために……たの……」


 視線を伏せ、顔を赤くしながら小さな声でカースは何とか言葉を絞り出す。聞き取れなかったシンフォニーが聞こえないよと何も考えずに言えば、カースのお人形さんみたいなお顔は真っ赤っかになる。


「だからっ、二人のためになにかしなきゃって思ったら、勝手に体が動いてたのっ!」


 恥ずかしい言葉でも言わされたかのように、こんなお顔見せられないよ!とカース両手で隠す。その様子を見て、なにか良くない部分が刺激されたシンフォニーは口元をオメガの形にしながらにやにやする。


「な、なによ……。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ……」


 恥ずかしそうにモジモジしながら噛みつくカースを、べつにーっと適当にあしらいながら、シンフォニーは変身を解く。もうワルイゾーは倒したから、いつまでも変身している必要はないのだ。


「シンフォニー、タイコンはおしりが削れて痛かったポコ。もっと優しく扱って欲しいポコッ!」


 空気の読めない妖精がなにか文句を言っているのを聞き流し、シンフォニー、奏は変わらずにやにやする。そんな奏を見て、自身も同じように変身を解いた伽羅も、まねっこして口をモニョモニョさせる。まだ上手に表情を作れない少女にとって、自然な笑顔を作るのはまだハードルが高かった。


「伽羅ちゃん!こんな悪い奏のことは真似しなくていいの!奏!いい加減にしないとそろそろ怒るよ!」


 既に4割くらい怒りながら、つられて変身を解いた縁呪は大きな声を出す。それをすぐそばで見ていた伽羅に、奏悪い子なの?と聞いて、そんなことないよー、言葉の綾だよーと言い訳する。


「本当に、縁呪だった。ねえ縁呪、どうして、あんなに危ないことをしたの?ちょっと間違えたら、伽羅ちゃんがいなかったら、縁呪の足なくなったままだったんだよ?」


 ほんの直前まで楽しそうにしていた奏が、目の前の少女を縁呪だと確信した直後、一瞬で真剣な顔に切り替える。喜ぶことよりも、からかうことよりも、奏にとってはそちらの方が大切だ。大切な人が危ないことをした理由を知らないと、止めることすら出来ないから。傷つくその姿を、もう繰り返したくないから。


「……二人とね、一緒にいたかったの」


 奏の真面目な表情を見て、照れている場合じゃないなと自体を重く受け止めた縁呪は、自分の中だけにあればいいと思っていた理由を話す。話さないことには、奏は納得しないだろう。納得したければ、いつまでも引きずることだろう。これまでの長い幼なじみ人生で、縁呪はすっかりその事を理解していた。


「二人が魔法少女になって、世のため人のために頑張っていることは知ってる。それがとっても大切なことだから、止めちゃいけないのもよく知ってる。でも、寂しかった。いつも一緒だった奏が、あたしが守らなきゃって思った伽羅ちゃんが、遠いところで戦っているのに、あたしだけ何もできない」


 ぽつぽつと話し始めて、次第に熱が入ってくる縁呪の言葉。それを聞いて奏は、やっぱり縁呪はすごいなぁと感心する。だって、奏は自分が追い詰められるまで、助けが来なくって、大切な人を失いかけるまで魔法少女になれなかったのだ。伽羅だって自分のピンチになって初めて変身したのに、それだけの奇跡みたいな出来事のはずなのに、縁呪は寂しいからなんて理由で変身できるようになるのだ。


「それが嫌だったから、二人と一緒にいられる力を願ったの。二人の隣に立てて、一緒にいられるような理由がほしかった」


 あたしにはみんなのためなんて立派な志はないけど、なくしたくないものくらいあるものと続ける縁呪。それを聞ければ十分だった奏は、真面目な表情をやめて先程までのにやにやを復活させる。


「つまり縁呪は、私たちと一緒にいられたらそれだけで十分ってことだね。いつも澄ました顔してるくせに、かわいいんだから」


 おちょくるように、一部の層に絶大な人気が出そうなムーブで奏は揶揄う。間違ってはないけど言い方になんか悪意がある!と再び顔を真っ赤にする縁呪を見て、奏は一転優しい顔になる。


「そんな心配しなくても、私はいつまでも縁呪のそばにいるのに。今までもそうだったし、これからだって同じだよ。それとも、そんなに私のことは信じられない?」


 卑怯な聞き方をした奏に対して、縁呪はそんなことないと伝える。信じられるとしても不安だからそばにいたかったのに、そう言ってしまえば信じられないと言っているのと同じだ。やり込められた縁呪は、奏のくせに……とほぞをかむ。


「伽羅も!伽羅も一緒にいる!」


 半分くらい空気になっていた伽羅が、忘れないで!と自己主張する。話に入れなかったのがよっぽど嫌だったのか、つんとお口を尖らせながら二人の手を握り、構ってアピール。


「うんうん。伽羅ちゃんも、縁呪も、私も。ずっと一緒だよ。ほら、縁呪もおててつなご?」


 ちょっと恥ずかしそうにしている縁呪の手を、奏が強引に掴む。簡単に解かれないように五本の指をしっかり絡めれば、縁呪にはもうどうすることも出来ない。繋いだままなら恥ずかしくって、かといって解いて楽しそうな伽羅の様子に水を差すこともできない。


 結局、繋がれた手が解かれたのは、遅れて到着した対応部隊がやってきてからだった。

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