2023/08/03 一番怖いのは人間?
趣味でホラー作品をよく見る。
見終えると他人の感想が気になるもので、ネットで検索する。すると、「何よりも恐ろしいのは人間」という言葉をよく目にする。
私はこの言葉を見る度、確かにそうかもしれないと同意する一方で、いまいち釈然としない思いにとらわれる。
恐怖というのは、生存本能を脅かす何かしらを知覚した時に生じるものである。私達を脅かす存在が、人間だけであるということがあろうか。私達の制御できない天候、環境、さらに人間の五感で捉えることすらできないナニカ──それがあるのかどうかすら、私は知り得ないが──に脅かされる時は、それこそ同じ人間に脅かされた時以上に、命の危険を感じることも少なくないのではないか。
「何よりも恐ろしいのは人間」という言葉は、世界で一番近しい人間相手だからこそ、皆が口にしやすい言葉なのではないかと思う。同じ環境を生きているから、どうすれば相手を害することができるかという想像がしやすく、その被害も身に迫って感じやすい。また、同じ社会を生きているから、完全に相手を排斥するのが難しいというのも、恐怖に拍車をかける。
人間由来の恐怖には、恐怖の対象となる者が自分と生きる世界を近しくしているからこその厄介さを含んでいる。
言うなれば、人間の恐怖というのは、比較的分かる恐怖なのだ。
本来の恐怖はそれだけではないと思う。
先ほど述べたように自然など人外のものに脅かされることもあれば、原因や脅かすものの正体すらわからず、ぼやぼやとした恐怖にじわじわと締め上げられていくこともある。
恐怖は私達の知覚の外へ、広大に裾野を広げている。
ここまで書いておいて今更の告白になるが、実は私はホラー作品がそこまで得意ではない。
ジャンプスケアが苦手なのだ。
ホラーに限らず、大きな効果音は苦手だ。アクションでもコメディでも、空間を揺らすほどの音には身を竦ませてしまう。
ただ、ホラー作品はこの世ならざる何かを扱ってくれるものが多いので、そういうものが出てくるのを心の支えにして、頑張って見ているのである。
そんな私が上のようなことを語れば、《人間こそ最も怖い派》の人々には、こう言われるかもしれない。
お前の怖さは、お前の弱さから来ている。
お前の弱さが恐怖を生み出すのだから、やはり、恐怖を感じるには人間らしさが必要なのだ。
恐怖の源は、人間であることから来るのではないか。
だから、一般的な意味合いとは少しズレるかもしれないが「何よりも恐ろしいのは人間」なのだ、と。
こうなると話はややこしくなってくる。
人間の認知が先か、あるいは脅威を与える現実が先か、と言ったらいいのだろうか。
卵と鶏論争である。
しかし私には、それを白黒つけるほどの熱量がない。
人間の弱さ、外的な脅威、両方があって楽しい幻想が育つのであって、だからまあ、筋道立てて考えなくていいやと思う。
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