第2話 ~中学時代~

僕が通い始めた中学校は、今の家からだいぶ近い。

夕方になると、野球部やサッカー部の掛け声が聞こえてくる。


入学初日、校舎の入り口で、ねずみ色のわら半紙を受け取り、自分の名前が書かれたクラスを探して、まず自分の下駄箱を見つける。


僕は引っ越しをしたので校区が変わり、中学校で知った顔はいない。


靴を脱ぎ、すのこの上で赤いふちの上履きに履き替えて、階段の方へ向かう。


周りは、だいぶ騒がしい。


何かを叫びながら駆け上がる男子。

甲高い声で、一段一段立ち止まってはしゃべりだす女子たち。


そんな彼ら、彼女らから感じるのは緊張と不安。

はしゃいでいるのは、そんな心理の裏返しなのだろう。


階を1つ上がって2階、廊下に出てすぐのところに僕のクラスがある。

いつものように、後ろからそっと教室に入る。


教室の前には時計と黒板、一段高いところに教壇があって、右にはテレビとビデオデッキ、左側には黒板けしクリーナーがおいてある。

後には木製のロッカー。

窓には淡い緑色のカーテンがかかっていた。


ワックスの独特のにおいが少し鼻につく。


机は、1列ずつ並んでいて、誰かと机を並べることはない。


黒板に、白と赤で番号が書かれていた。


クラスは40人程。

すでに、何人か席に座っていた。

僕も、自分の出席番号と黒板に書かれた番号をよく読んで、席につく。


机は茶色く、ニスの塗られた合板でできていて、右上のほうには「バカ」と刻まれた傷のあとが見えた。

左下の隅には、誰かが空けた小さな穴があり、消しゴムのカスが埋められていた。


席は、窓際の前から3番目。

窓からは、大きなヒマラヤスギの幹が見える。

払われた枝の後が顔に見えた。

僕の中学生最初の友達はヒマラヤスギだった。

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