合わせ鏡 シーズン2

ブライトさん

第1話 ~卒業~

親友の通夜の日から1か月が経ち、冬休みを終えた3学期の初日。

いつもの交差点にはうっすらと雪が積もっていた。

まだ、この道がそんなに広くなかった頃の、親友と作った雪だるまが目に浮かぶ。


交差点には信号がつけられ、その足元には花が添えられている。

赤信号で立ち止まっている間、その花を見つめ、青に変わるまで「僕もごめん」と目をつむり、つぶやいてる。


やがて、暖かさも感じる日が増え始め、3月も残すところあと1週間。

僕は、小学校を卒業した。


春休み、僕たち家族は同じ街の、別の所に引っ越した。

父方の祖父母の家の隣。

畑の隅の新しくて少し広めの2LDKのアパートの2階で、ベランダから畑の向こうに遠く富士山が見えた。


卒業、引っ越し、そして進学。

そうした門出というもののおかげなのかもしれないが、親友との死別の悲しみもだいぶ落ち着いている。


子供の心の傷は、大人がおもうよりずっと修復能力が高いのだと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る