ゴブリンは勝利を祝います2
『おおっ!? あなたが獣人の英雄か!』
少し迷ったけれど実体の形でカジオを呼び出す。
パラファンは目の前に現れたカジオに頭を下げる。
ジジイとの戦いの最中にもパラファンとカジオは共闘していたのだが、ジジイが強すぎてカジオのことなど気にかけている場合ではなかった。
『俺は誇り高き巨象族の戦士パラファンと申す! 噂にも名高い獅子族の英雄カジオ殿に会えて光栄だ!』
卑怯な真似をする人間などに払う経緯はないけれど獣人のためにも力を尽くして戦ったカジオには敬意を払う。
『ふふ、全て見ていた。親父殿を上回る勇敢な戦士だな』
『英雄殿にそう言っていただけて嬉しいですな!』
パラファンは大きなミミをバタバタと動かして喜ぶ。
てっきり手合わせでも願うのかと思っていたけれどカジオのファンだったみたいである。
今回戦争で相手の首級をあげた氷豹族や黒狼族もカジオのところに集まってきた。
「ねえ」
「どうした?」
明るい雰囲気で飲み食いが続く中ユリディカが少し暗い顔をしてドゥゼアの肩をつついた。
「あのね……あのおじいさんだけど」
「ジジイがどうした?」
「破壊の神の使徒だと思うんだ」
「なんだと?」
「目が黒くなってたから……」
ユリディカは女神から力を受け取る時に破壊の神の使徒の力を見た。
感じられる魔力の圧力や目が黒くなった姿はその時の光景を思い起こさせたのだ。
「破壊の神……だと?」
「何かあるの?」
引っかかったような顔をするドゥゼアにユリディカは少し不安気に首を傾げた。
「……ジジイの魔力は魔王だった」
「まおー?」
ユリディカと対照的にドゥゼアはジジイから別の印象を受けていた。
ジジイの魔力に魔王を見た。
ゴブリンに回帰する前の記憶、直接魔王と戦ったことはなかったけれど勇者のための露払いとして魔王の近くまでは行った。
魔王の魔力を感じていたし、魔力の影響を受けた魔物とも戦ったのだ。
その時と同じような力の印象がジジイにはあった
「破壊の神か、それとも魔王か……あるいは」
考えたくもない可能性がドゥゼアの頭の中に浮かんでくる。
『どうした! 暗い顔をして!』
神妙な面持ちのドゥゼアの肩をパルファンがバンバンと叩く。
『ほら、これも食え』
パルファンはドゥゼアの前にさらに皿を置く。
カジオはどうしたのかと見てみるとカジアを抱きかかえてカジイラと言葉を交わしていた。
そういえばカジオがカジアやカジイラとちゃんと話すような時間もなかった。
「まあ食べるか」
今は祝いの席である。
暗い将来の不安に囚われて周りをに心配をかける必要などない。
魔王でもいい。
破壊の神の使徒でもいい。
敵対するなら倒して進むだけ。
ドゥゼアはデカい肉にフォークをブッ刺してワイルドにかぶりつく。
どの道人間の軍の中にもジジイは見つからなかった。
つまりはどこかで生きている。
「ジジイとの因縁は続きそうだ……」
ーーー第四章完ーーー
後書き
いつもお読みくださってありがとうございます!
この話で第4章が完結となりました。
想像していたよりも長い章になってしまいましたが物語が一つ進んだ感じになりました。
まだまだもうちょい物語としては続きます。
よければお付き合いくださればと思います。
ここまで読んできてまだ星入れてなかったな、とかブクマしてもいいかもという方がいらっしゃいましたら入れてくれると嬉しいです!
のんびりとこちらの小説も続けていきます。
いつも応援してくれてありがとうございます。
犬型大
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます