ゴブリンはお宝を見つけました3

 島には宝箱が見えているのだけどそれ以外にも見えるものがある。

 まるで像のように動かない2体のアイアンテールウィーゼルが宝箱の両側にいるのだ。


 まるで宝箱を守っているようで、しかもそのアイアンテールウィーゼルは全身金属に覆われているのである。

 つまり水を乗り越えて島まで行き、そんなに広くない島で全身金属のアイアンテールウィーゼルと戦わねばならない。


「かなり面倒だな……」


 ドゥゼアは腕を組んで顔をしかめる。

 とりあえずアイアンテールウィーゼルのことは置いといてまずは島まで行くことを考える。


 島までは遠い。

 飛んで越えられるような距離ではない。


 現実的な方法としては泳ぐことが考えられる。

 しかしみんなが泳ぐことができるのかドゥゼアは知らない。


 リザードマンのオルケなら泳げそうだがワーウルフのユリディカは毛が水を含んで重くなりそうだし泳げるような感じがしない。

 レビスもここまで一緒にいるが泳ぎなどしたことないので泳げないだろう。


 レビスに関しては教えれば島まで行くぐらいの泳ぎはすぐにできそうな気がするけれど。

 泳げないても足掻いて前に進めばなんとかなる距離でもない。

 

 改めて水を覗き込む。

 底が見えなくて足もつかなそうな雰囲気がある。


「え」


「なにこれ!」


 ドゥゼアが近くにあった石を拾い上げて水の中に投げ入れる。

 すると石は異常な速さで沈んでいきながら粉々に砕けていってしまった。


「超重水ですね」


「ちょーじゅーすい?」


 ドゥゼアの他にオルケだけがこれが何か分かっているようだ。


「すごく不思議な水で普通の何倍もの圧力がかかるんです。

 一度入るととんでもなく重たく水の力がかかって出られなくなって潰れて死んじゃうんです」


 この世の中には超重水という不思議な水がある。

 これもまた魔力を多分に含む水で深海のような非常に高い水圧を持っている。


 一度落ちたらあっという間に水底に沈んでいって助からない。

 例え泳ぎの得意なリザードマンでも泳ぐのは無理だろう。


「えー!

 じゃあどうやってあそこまでいけばいいの?」


「さあな」


 流石のドゥゼアもお手上げだと首を振る。

 泳ぐのも無理そう。


 となると空でも飛ばなきゃ無理だろう。


「ひとまず渡る方法は後にしてあのアイアンテールウィーゼルをなんとかする方法も考えなきゃな」


 島はそんなに広くない。

 さらに水の中に落ちることも出来ないことを考えるとかなり行動は制限される。


 アイアンテールウィーゼルに押し出されでもしたらそれで一巻の終わりとなる。

 1体ならともかく2体もいると戦うのはかなり厳しそうである。


「魔法で倒せないか?」


 アイアンテールウィーゼルに遠距離攻撃の手段はないし魔法に対する防御も基本はない。

 少しばかり距離はあるけれど魔法が届くなら魔法で倒せないかと考えた。


「やってみますか」


 上手くいけば悩みは島までの移動だけになるかもしれない。

 オルケが目を閉じて集中力を高める。


「はああああっ!」


 魔力を高めながら両手を天に突き上げる。

 最初は小さな火の粉だったのに瞬く間に燃え上がって大きな火の玉になる。


「いっけー!」


 オルケが両手を振り下ろすと火の玉がアイアンテールウィーゼルに向かって飛んでいく。

 宝箱大丈夫かなと思うけれど一度放たれた火の玉はもう止められない。


「あっ!」


 動かないかなと思われたアイアンテールウィーゼルだったがちゃんと動いた。

 2体のアイアンテールウィーゼルが同時に飛んできた火の玉に飛びかかる。


 体ごと回転させて尻尾を火の玉に叩きつけた。

 火の玉は尻尾の威力に負けて叩き切られて水の中に飛んでいった。


 ジュワッと音を立てて火の玉が簡単に鎮火してしまい、アイアンテールウィーゼルたちはすぐさま元の場所に戻る。


「うーむ……厳しそうだな」


 動かないと思ったから魔法を放ったのだけど普通に動いてきた。

 全身金属になると燃えることも恐れずに魔法を逆に攻撃して叩き落としてきてしまった。


 もっと高威力の魔法を扱えるなら遠くからでも可能性はありそうだがオルケにはそうした魔法は使えない。

 それにそんな威力で魔法を放たれたら宝箱も無事でいられない可能性もある。


「どうするか……」


 可能性としてあるのはそもそも取れるようになっていないものというのも一定数存在はしている。

 ダミー宝箱というわけじゃないのだけど構造上宝箱を取ることが難しいというダンジョンもあるのだ。


 無理をするだけ罠なんかで危険に陥るというタチの悪い代物なのだ。


「とりあえず宝箱は取れそうだからな」


 でも今回は頑張れば宝箱のところにはいけそうな感じはある。

 取れない宝箱ではない。


「上手くいけば行ける……だけどそのあとどうする……」


 水を乗り越えて行けそうな作戦は思いついた。

 けれどその先は問題だ。


 あのアイアンテールウィーゼルを倒すのは簡単じゃない。

 そもそもドゥゼアたちに倒せるだろうかとすら思う。


 全身金属に覆われてしまっていたらドゥゼアの武器では歯が立たない。

 ユリディカとレビスでも無理。


 そうなるとオルケの魔法にかけるしかなくなる。

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