ゴブリンはお宝を見つけました4

 けれどオルケの魔法を遠くからでは無理。

 どうにか渡って、どうにかドゥゼア、レビス、ユリディカで時間を稼いでオルケに魔法を使ってもらう必要がある。


 かなり厳しい。

 さらに魔法を使ってちゃんと倒せるのか、ドゥゼアたちにも被害が及ばない程度に魔法を使えるかという問題などもある。


 宝箱の中に何が入っているのかも分からない。

 この大きなリスクを背負ってまで取るべき物が入っているのか。


「分からん!」


 ゴブリンの頭では考えるのにも限界がある。

 あまり複雑なことを長考していると段々熱を持ってくるような感じすらあるのでドゥゼアは考えるのを投げ出して地面に体を投げ出した。


 時にはいい考えが出ないこともある。

 こうした時は考えるのをやめる。


 ここはリスクを取らないで諦めることも視野に入れねばならない。

 生き残るために色々と手に入れたいのにこんなところで死んでは本末転倒だから。


 ドゥゼアが寝転がったのをみてレビスとユリディカがサッと隣に寝転がる。

 出遅れたオルケは迷った挙句ドゥゼアの枕元にちょこんと座る。


「あの場所でアイアンテールウィーゼルを倒すのは厳しそうだ。

 だけどお宝はもったいない……」


 とりあえず何かいいアイデアはないかとみんなにも投げかけてみる。

 これまでいいアイデアが出てきたことはないけれどふとしたことが考えるヒントになるかもそれない。


「どうしたらいいと思う?」


 ドゥゼアの手を取ってレビスがポンと自分の頭の上に乗せて、ユリディカもそれを見て同じようにする。

 されるがままのドゥゼアはそのままレビスとユリディカを撫でてやる。


 そしてオルケは何を思ったのか空いている手もないので逆にドゥゼアの頭を撫で始めた。

 なんでだ。


「んー思いつきませんね……」


 もっと強い魔法を使えたらとオルケは悔しそう。

 フォダエのように強ければこうした時にも役に立てるのに。


「……思いつかない!」


「その真っ直ぐな意見好きだぞ」


 少し考えるように目をつぶったユリディカであったが結局いい考えは浮かばなかった。

 分からないことを分からないといい、思いつかないのなら思いつかないという。


 下手に誤魔化したり考えたフリされるより全然いい。


「えへへ!」


 尻尾を振ってニパッと笑うユリディカ。


「……倒さなきゃダメ?」


「ん?」


「別に倒さなくてもお宝取ればいい」


「……確かにそうだな」


 レビスは思った。

 倒すのが難しいなら倒さなくてもいい。


 目的は宝箱のお宝であってアイアンテールウィーゼルを倒すことではない。


「レビス!」


「な、なに?」


「その通りだ!」


 全くもってその通り。

 ドゥゼアは起き上がってレビスの頬をムニムニと揉む。


 なぜ倒さねばならないと思い込んでいたのか。

 あのアイアンテールウィーゼルはあくまでもお宝を守っているだけ。


 倒さなきゃお宝を手に入れられないものじゃない。

 思い込みにとらわれていた。


「いいそ、レビス!」


「うに……むに……」


 いいアイデアを出してくれたものだと思う。

 レビスも頬ムニムニを大人しく受け入れている。


「う、羨ましい……」


 ちゃんとこうしてアイデアを出せばドゥゼアはそれを考えて褒めてくれる。

 ただ分からないというだけじゃなく知恵を働かせる必要があるとユリディカもレビスを羨ましそうに見ていた。


「よし、じゃあ奪い取る方向で考えるか」


 倒さなくてもいい。

 ならばどうにか隙をついて宝箱なり、中身なりを奪って脱出すればいい。


 アイアンテールウィーゼルを倒すよりよほど現実的な考えである。


「問題はどう盗むかだな」


 宝箱は意外と大きい。

 ドゥゼアでも抱えられそうなサイズではあるが中身によってはかなり重たいものかもしれない。


 しかし倒すことを考えている時よりはよほど頭が回る。


「少しばかり試してみる必要があるかもな」

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