ゴブリンはお宝を見つけました2
レビスは平気だと笑って首を振る。
本当に不調があるなら正直に言ってくれるはず。
レビスが平気だというならそうなのだろうとドゥゼアもそれ以上追及しない。
「じゃあそろそろ行くか」
襲撃もなく体をしっかり休めた。
この怪しい林に潜り込む時が来た。
草原になっている周りよりも背の高い草が生えていて密集というほどではない程度に木が生えている。
ドゥゼアを先頭にして草をかき分けて進み、ユリディカにはミミなどを使って周りの警戒をしてもらう。
「あっち!」
進み始めて程なくしてユリディカのミミが音を感じ取った。
ユリディカが指差した方を警戒しながらみんなで体を寄せる。
周りの草を踏み倒して少しスペースを作る。
ドゥゼアよりも少し低いぐらいの草が揺れていることがドゥゼアにも見えた。
「下!」
近くで揺れた草。
急に動きがなくなった。
これまでなら飛び上がるように襲いかかってきたのに来ない。
身をかがめて素早く草から抜け出してきたアイアンテールウィーゼルが金属をまとわせ鋭く尖らせた尻尾を突き出した。
「くっ!」
剣で尻尾を受け流すように防いだドゥゼア。
「そいつだけだよ!」
他にもいるかもしれないと思っていたが襲いかかってきた1体しかいない。
「面倒だな」
ドゥゼアを一突きしてアイアンテールウィーゼルは草の中に引っ込んだ。
一瞬見えた姿、体の半分ほどが金属に覆われていた。
長く生きるほど体に保有する金属は多くなる。
運が良く長生きすればあのように金属面積が増えることもあるのだなとドゥゼアは思った。
慎重に動いているのか草の揺れも少ない。
目を凝らしてわずかな揺れを見逃さないようにする。
一応魔法使いであるオルケをドゥゼアたちで囲んで守るように警戒する。
「レビス、そっちだ!」
それぞれの方向を見張っていたらレビスの前の草が一際大きく揺れた。
アイアンテールウィーゼルが飛び出してきて尻尾を突き出す。
「ぬっ!」
冷静に尻尾の軌道を見極める。
頭を逸らして尻尾をかわした。
「逃がさない」
尻尾を引っ込めて逃げようとしたがレビスは手に金属をまとわせて尻尾を掴んだ。
グンッと引っ張られてアイアンテールウィーゼルが逃げることに失敗する。
「よくやった!」
逃げることも尻尾も封じた。
ドゥゼアとユリディカが一気にアイアンテールウィーゼルに襲いかかる。
「ふん!」
アイアンテールウィーゼルが放せと怒りの鳴き声を出しながら金属をまとった爪でレビスを切り付けようとするけれどレビスは手甲でそれを防ぐ。
「おりゃあ!」
「くらえ!」
ユリディカがチクートを装備した手を振り下ろして押さえつけるようにアイアンテールウィーゼルを地面に叩きつける。
ドゥゼアの剣、ユリディカの爪、レビスの槍が一斉にアイアンテールウィーゼルに迫る。
つくづく思うのはアイアンテールウィーゼルは痛みにも弱い。
高い防御を誇るが故なのかもしれないが少しでもダメージを受けるとアイアンテールウィーゼルの動きはあっという間に鈍る。
レビスの槍が金属化の隙間を突くように腹部に突き刺さってユリディカの手にかかる逃げ出そうとする力も弱くなる。
「トドメだ!」
痛いだろうがまだ致命傷じゃない。
ドゥゼアがすぐさま金属化していないところを狙って剣を突き立てる。
か細い声をあげてアイアンテールウィーゼルの体から力が抜けていく。
「わたっ!」
死んだアイアンテールウィーゼルが魔力となって消えて押さえつけていたユリディカがバランスを崩す。
「大丈夫か?」
「う、うん」
何とか転ばずには済んだ。
アイアンテールウィーゼルが消えた後には今までのものよりも一回りほど大きな魔石と金属のカケラ、お肉をドロップした。
「このまま行くと全身金属のアイアンテールウィーゼルも出てきそうですね」
「……ありえそうだな」
敵が強くなるにつれてアイアンテールウィーゼルの金属面積が広くなっている。
最後には全てが金属に覆われた個体がいてもおかしくはなさそうである。
ボスになったらそれこそそうなっていそうな予感すらある。
「とりあえずまたこうして襲ってくるかもしれないから警戒しよう」
まだ会ってもないボスについて想像ばかり膨らませても時間の無駄である。
ドゥゼアたちはまた歩き始める。
「おっ……」
草をかき分けていくと急に開けた場所に出た。
「ドゥゼア、あれ!」
「ああ、見えてるよ」
林の真ん中にポッカリと湖があった。
さらにその湖の真ん中に島のようなものがある。
そして島の真ん中に宝箱のようなものが見えていた。
ダンジョンのお宝を見つけた。
興奮して尻尾を振っているユリディカであるがドゥゼアは冷静だ。
周りを見回して状況を確認しながら敵はいないかと警戒も怠らない。
「あんなとこどうやって行くの?」
興奮するユリディカが気づいていない問題にオルケは気がついていた。
湖のど真ん中に島があるのだけどそこまで行くのに道もないのである。
結構岸から島までは距離がある。
泳いでいくにしてもかなり大変そうである。
「分からん。
しかも……」
どう見たって島に行ってそれでお宝ゲットですとは行かなそうだとドゥゼアはため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます