ゴブリンは成長します1

 肉も手に入るので食べ物の心配も少なくダンジョンに挑むことができた。

 ダンジョンへの出入りを繰り返してアイアンテールウィーゼルを倒す。

 

 ひとまず出入り口から近いところでグルグルと倒して回っていたのだけど現在のところアイアンテールウィーゼル以外の魔物は出てきていない。


「そろそろ少し活動の範囲を広げるか」


 焚き火の煙でいぶした燻製肉のストックも出来た。

 思い切ってもっとダンジョンの中を探索してもいいだろうとドゥゼアは決断した。


「レビス!」


「うん!」


 だいぶ慣れたものでアイアンテールウィーゼルをドゥゼアとレビスで挟撃する。

 金属部分が少ないアイアンテールウィーゼルでは同時に攻撃された時金属だけでは対処しきれない。


 なので2カ所以上を同時に攻撃してしまえば案外あっさりと倒せた。

 オルケの魔法でも倒せるし、魔法の精度も少しだけど上がってきた。


「とりあえず……あの木立に向かうか」


 探索範囲を広げるといっても広いフィールドタイプダンジョンではどう動いていったらいいのかも中々難しい。

 ひとまずドゥゼアは少し離れたところにある木立に向かうことにした。


 その草原の真ん中にポンとレアなものが落ちているとは思えない。

 ダンジョンのお宝があるとしたらあのような場所だろう。


「むむ、いるよ!」


 ユリディカのミミが音をキャッチした。

 木立からアイアンテールウィーゼルが2匹飛び出してきてドゥゼアたちに襲い掛かる。


「レビス、1匹引きつけろ!」


「分かった!」


 こうした役割はユリディカの方が得意であるがレビスも経験を積んでいかねばならない。

 今のレビスの実力ならアイアンテールウィーゼルに負けることもないだろうと2匹のうちの1匹を任せる。


 倒せなくともドゥゼアたちが1匹を倒すまでの間引きつけてくれればそれで十分である。

 レビスならそれぐらい簡単だろう。


 アイアンテールウィーゼルが尻尾ではなく前足に金属を集めてドゥゼアを切り裂こうと飛びかかった。

 普通の爪でもゴブリン程度なら簡単に切り裂けるだろうが金属で強化された爪はさらに危険度が高い。


 しかしドゥゼアはそんな爪をギリギリのところで回避する。

 魔力を含む水のおかげか体の調子も良くて危なげなく振り回されている爪を避けていく。


「敵は俺だけじゃないぞ」


 ドゥゼアはタイミングを見計らい爪を短剣で受け止めた。

 弱そうだと見てドゥゼアを襲ってきたのは正解かもしれないが戦っているのはドゥゼアだけではない。


 爪を止められたアイアンテールウィーゼルの後ろにはユリディカが迫っていた。

 ドゥゼアに集中していて対応が遅れた。


 金属を動かそうとしたけれど間に合うことがなくユリディカに背中を大きく切り裂かれてアイアンテールウィーゼルは倒れた。


「レビスは……」


 知能も足りていないので慣れれば慣れるほど戦いは楽になる。

 サラッと戦いを終わらせてレビスの方に視線を向ける。


 冷静に戦うレビスはしっかりとアイアンテールウィーゼルの金属の尻尾をかわしている。

 ドゥゼアほど引きつけてギリギリにかわすような技術はまだないが動作が大きくなりすぎないように少ない動きでかわせている。


 レビスが反撃として槍を繰り出すが尻尾で防がれる。

 回避に重点を置いているためかやや攻撃の繰り出しが遅めになっていた。


「やっ!」


 何回かアイアンテールウィーゼルの攻撃をかわしたレビスが槍を突き出した。

 今度は回避からそのまま攻撃に転じてしっかりと槍を振れている。


「おお……」


 レビスの攻撃に対してアイアンテールウィーゼルの方が間に合った。

 腹部を狙った槍は集めた金属にぶつかって防がれた。


 けれどレビスの攻撃はそれで終わりではなかった。

 一度でダメなら二度。


 さらに足を踏み込んでレビスはもう一度槍を突き出した。

 狙いをずらして今度は首を突く。


 2回目はレビスの方が早かった。

 ぶすりと首元に槍が突き刺さってアイアンテールウィーゼルが小さく悲鳴を上げた。


 感心して思わず声が漏れてしまった。


「レビスよくやったじゃないか」


 回避から攻撃に移る動作、そして二連撃と完璧と言っていい動きであった。

 危なかったら助けに入ろうと見ていたが助けに入る必要もなかった。


 ドゥゼアが声をかけてやるとレビスは振り返って笑う。

 あのような動きが出来るなら例え人間の冒険者と戦ったって油断できない相手になるだろう。


 ゴブリンでも努力して体の使い方を学べばちゃんと戦えるようになるのだ。


「木立にはアイアンテールウィーゼルが隠れているのか?」


 これまでアイアンテールウィーゼルは群れを成さずに1匹ずつしか出てこなかった。

 ここに来て2匹に増えてもあまり大差はないが木立から飛び出してきたということはもしかしたら木立をアイアンテールウィーゼルは巣にしているのかもしれない。


 見える木立はいくつかあるので検証がてらに寄ってみる。

 するとまた2匹、あるいは3匹のアイアンテールウィーゼルが飛び出してきた。


 狩りとしての効率を考えるなら木立を巡っていった方がアイアンテールウィーゼルの数は倒せるかもしれないなと思った。

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