ゴブリンはイタチを狩ります2
再びアイアンテールウィーゼルがドゥゼアに飛びかかる。
ドゥゼアも集中力を高める。
アイアンテールだからと尻尾がくると思い込んではいけない。
爪や牙も金属をまとって攻撃してくることもある。
尻尾の攻撃だって侮れない。
受けるのを失敗して真正面から受けてしまったので短剣の刃が欠けてしまった。
それだけの威力と頑丈さを誇っている。
普通の剣などと違っていて尻尾としての柔軟さを持ち合わせているので受けるのも意外と難しいのだ。
今度はアイアンテールウィーゼルが体を縦に回転させた。
金属をまとった尻尾が振り下ろされる。
ドゥゼアは振り下ろされた尻尾を短剣で受け流しながら回避する。
「やっ!」
意外と力が強くて手が少し痺れているが歯を食いしばって間髪入れずアイアンテールウィーゼルに向かって短剣を突き出した。
「なっ……!」
見事に首を目がけられたと思ったがアイアンテールウィーゼルに突き当たった短剣は甲高い音を立てた。
首に金属が集められて短剣を防いでいた。
ぶっ飛んだアイアンテールウィーゼルは着地に失敗したので首元に短剣が当たった衝撃によるダメージはあるようだ。
「やああああっ!」
「やっ!」
ドゥゼアの攻撃は防いだけれど敵はドゥゼアだけではない。
個々の戦いも強くなってきたがもちろん連携を取った集団としての戦いも少しは練習してきた。
レビスとユリディカがドゥゼアが攻撃したのに合わせて前に出た。
着地に失敗して地面を転がったアイアンテールウィーゼルに追撃を試みる。
タイミングを図って同時に攻撃する。
ガキンと音がしてユリディカの爪が防がれる。
しかしレビスの槍が腹に深く突き刺さってアイアンテールウィーゼルは断末魔の叫びを上げる。
アイアンテールウィーゼルの能力も万能ではない。
体に保有している金属にも限界があるし攻撃をピンポイントで防ぐのも難しい。
ユリディカの攻撃はなんとか防いだみたいであるがレビスの方にまで金属が回らなかったようである。
槍が突き刺さったところに金属が集まってきている。
けれど刺された後に金属を集めてもなんの意味もない。
悲しげにも聞こえる声を出して体から力が抜ける。
「意外とめんどくさいな」
素早く攻撃を決めないと金属でガードされてしまう。
イタチの力や知能が足りていないために金属を操る能力を発揮しきれていないというのに今の段階でも強力な能力である。
攻撃にも防御にも活かせるのは非常に強い。
それをたかだかイタチが持っているというのはもったいない限りである。
もっと魔力があるとか知能が高い魔物がこの能力を扱えれば凶悪なものであったろうにと思わざるを得ない。
「魔石と……金属片か。
どうしろっていうんだよ」
アイアンテールウィーゼルの死体が魔力となって消えていく。
やはりここはダンジョンなのだなと認識させられる。
残っていたドロップ品はアイアンテールウィーゼルの魔石と四角い金属の塊であった。
指先ほどの大きさの小さいものでどう活用したらいいのかドゥゼアにも分からない。
小さすぎるし量を集めてもドゥゼアたちには金属を加工してくれるアテもない。
とりあえず持ち帰りはするけれど後々邪魔になるようなら捨てていくことも考えるしかない。
「ほれ」
「いいの?」
「トドメを刺したのはお前だからな」
ドゥゼアは魔石をレビスに渡した。
倒したのはレビスなのでご褒美みたいなものである。
人間の冒険者なら丁寧に持ち帰って売るのだけどドゥゼアたちは魔物なので売りにはいけない。
ならどうするかといえば食べるのである。
魔石は魔力を多く含んでいて魔物にとって上質な魔力供給源になる。
魔力が多いためか食べると美味しく感じるので良いおやつにもなる。
「おいし」
レビスが魔石を口に放り込んでニコリと笑う。
しばらくは口の中で転がして、少し味が薄くなったなと思ったら噛み砕くのである。
それを見て奮起するのはユリディカ。
自分もドゥゼアに褒めてもらうのだとやる気を出す。
アイアンテールウィーゼルには金属を操る能力を活かし切る能力はない。
しかしだからと言ってその能力が低いというわけではない。
素早さも高くて意外と力も強い。
長い尻尾は金属で覆われると重量も増して当たれば致命的にもなりうる。
「また来るよ!」
対面すると結構デカいのだけど戦いが始まるまでは体勢を低く保って近づいて来られると見つけるのが難しい。
よく草の動きを見ていれば見つけられるがユリディカが音で異変に気づく方が早い。
「ほっ!」
今度はユリディカが前に出る。
振り上げられた尻尾とチクートをまとって振り下ろしたユリディカの手がぶつかり合う。
流石にユリディカの方が力が強くてアイアンテールウィーゼルの尻尾が押し戻される。
すぐさまユリディカは逆の手で追撃を加えるが金属を体に移動させて体が切り裂かれることを防御した。
「逃がさないよ!」
ただあくまでもガードしただけ。
ユリディカはそのままアイアンテールウィーゼルを地面に押しつけて捕まえる。
「どっちを取るかな?」
そして押さえていない方の手を振り上げてユリディカはニヤリと笑う。
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