ゴブリンはリザードマンを仲間にしました1
「ユリディカすまないな」
「うーん、しょうがないよ」
ドゥゼアやレビスで体格的に小さすぎてリザードマンとなったオルケを抱えられない。
なのでユリディカがオルケを背負っている。
ドゥゼアとレビスで後ろからオルケを押して少しでもユリディカの負担を軽くしようとは試みている。
一切光の入り込まない地下であるのでゴブリンやワーウルフであっても視界がきかない。
「骨師匠とピュアンは大丈夫かな?」
「……さあな。
でも少なくとも2人は一緒だ」
多分助からない。
フォダエの発言からしてもやられたことは間違いないと思っている。
しかしきっと2人は一緒だ。
いつまでも、どこまでも。
「フォダエも」
珍しく悲しげな色を映したレビスの瞳がオルケを見上げた。
間柄が深まるほど長く一緒にはいなかった。
けれど2人の間に特別な絆があることは見ていて分かったし少し話を聞いただけでも同情するような余地はあった。
レビスに関してはゴブリンには珍しく知性が高い。
フォダエとオルケに同情して何かしらの感情を抱いてもおかしくはない。
「フォダエの方は……どうだろうな」
こちらについては本気で予想がつかない。
出来るならフォダエに勝ってほしい。
しかしジジイも強い。
フォダエの方は消耗もしているし地下空間では魔法も自由に使えないだろう。
正直なところ勝機は薄いかもしれない。
でもコイチャよりはまだ可能性がある。
「あのジジイさえぶっ殺してくれたなあ」
そうしてくれたらこのゴブ生ではフォダエに一生感謝する。
どうしてもジジイの自分を見てくる目が気になって仕方ないドゥゼアはそう思った。
「う……おっと!」
「な、なに?」
「体を低くしろ!」
突然大きな揺れが起きてドゥゼアたちはバランスを崩す。
立っていられないほどの揺れに無理に逆らわないで倒れ込むようにして地面に伏せる。
地震かと思ったが揺れは短い時間だけで同時に大きな音も聞こえてきた。
ユリディカやレビスは動揺していてなんなのかわかっていないようであったがドゥゼアは一瞬で何が起こったのかを理解した。
フォダエが何かした。
それがどんなものかまでは知らないけれど大きな魔法を使ったのだということは分かる。
地面が大きく揺れるほどの魔法。
結末はどうなったのだろうか。
戻って確かめたいような気もするが胸にざわつきがよぎった。
「行こう。
もう多分、揺れない」
少し待ってみても揺れは来なかった。
先ほどの揺れのせいで天井にヒビが入っていてあまり長居すると隠し通路が崩壊するかもしれないと考えてドゥゼアたちは先を急ぐ。
ユリディカもバランスを崩してオルケは放り出されてしまったがそれでもまだ寝ていた。
「はぁ……長いな」
結構歩いてきた。
暗いのであまり分からないがひたすら真っ直ぐに隠し通路を進んできた。
未だに出口も見えない。
休み休み歩いて来たけれど終わりが見えないということは精神的にも疲労を助長する。
お腹の空き具合からして1日やもっと長いぐらい歩いてきた。
このままでは餓死してしまうのではないかなんて不安すら頭をよぎる。
それに出たところでという問題もある。
次にどうするのか全く考えられない。
オルケもどうしたらいいのかもまた悩みどころだ。
「ドゥゼア、光が見えるよ!」
「本当か?」
真っ暗な中、かなり遠くにうっすらと光が見えた。
ようやく見えた光明にドゥゼアたちの足も自然と早くなる。
「ユリディカ、パンチ」
「りょーかい!」
光の近くまで来たら短い階段となっていて天井にわずかな隙間があってそこから光が漏れていた。
ユリディカがチクートを装備して光が漏れている付近を殴る。
ズボッと手が突き出して大きく開いた穴からさらに光が差し込んでくる。
久々の光に目がくらみながらもユリディカがガンガン殴りつけて壊していく。
隠し通路を隠すように覆っていた土をどけるとようやく外の世界に出ることができたのであった。
日の光が目に染みて慣れてこない。
そろそろと慎重に出てくると閉ざされた地下空間と違って空気が暖かく、十分な酸素が胸いっぱいに広がる。
何度も目を瞬いてようやく少しずつ光に目が慣れてくる。
「ここは……」
周りを見て状況を確認する。
「草原?」
風が吹いて草が揺れる。
穏やかで心地の良い草原の中にドゥゼアたちは出てきていた。
振り向くと地面に空いた穴。
今ドゥゼアたちが出てきた隠し通路である。
隠し通路の穴の向こうに森が見えた。
死の森だ。
つまりドゥゼアたちは隠し通路を通って死の森を突っ切って出てきたようであった。
そりゃいくら歩いても出口に着かないわけである。
「ドゥゼア、あれ」
レビスがドゥゼアの肩をつついた。
指を指しているところをみるとそこにはリュックが置いてあった。
「まさか……」
ドゥゼアがそのリュックを確認するとドゥゼアたちが持っていた荷物だった。
「困らないようにするってこういうことか……」
側には崩れ落ちた獣の骨があった。
どうやってかは知らないが獣型のスケルトンにドゥゼアたちの荷物を運ばせたようである。
「とりあえずメシにしようか」
何が起きたとかどうでもいい。
ひたすら歩き続けてお腹も空いている。
荷物の中から食料を取り出してドゥゼアたちはまずは空腹を満たすことにした。
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