ゴブリンはスケルトンメイドに会いました1
リッチがいつ帰ってくるかわからない。
だからといって外を歩き回るわけにもいかない。
幸いなことに巡回のスケルトンは部屋まで確認しに来ることはないので大人しくしていればバレることはなかった。
ジッと部屋の中で大人しく待つけれどやっぱり暇である。
スケルトンの足音から移動のタイミングを図って近くの部屋を確認してみることにした。
しかしどの部屋も似たようなもの。
木製の置物や像が置いてあって見てる分にはなかなか面白いがどんな性格したリッチなのか分からなくなる。
多少バイジェルンにも調査してもらった。
部屋はどれも閉まっててバイジェルンじゃ侵入できなかったがドゥゼアたちがいる場所からも反対側も同じような作りで部屋がある。
そして大きな屋敷なのだ、2階もある。
2階は部屋数少なめで一部屋あたりの大きさが広めのようだ。
スケルトンも室内のものは武装している。
剣を持っていて屋敷の端から端までを行ったり来たりして巡回しているとのことだった。
それほど巡回速度は速くないので上手くタイミングを合わせれば移動もできる。
「移動するか……」
部屋で待ってるのも飽きた。
もしかしたらリッチの弱点的なものだって見つかるかもしれない。
まだリッチが戻ってこないのなら1発調査でもしようとドゥゼアは思い至った。
小さくドアを開けてバイジェルンに外に出てもらう。
クモの糸を繋いでおいてドゥゼアは待つ。
クンクンと糸が引っ張られる。
ドアの前をスケルトンが通過した合図である。
ドゥゼアたちは部屋を出る。
そして走り抜けて屋敷の反対側に向かってみる。
「ここは……魔物素材か?」
部屋の中には棚が置いてあった。
そこには魔物の素材と思わしきものが並んでいる。
爪や牙、皮などから瓶詰めにされたものや液体なんかもある。
これも丁寧に分類されて並べてある。
「ここは武器だね」
次の部屋は武器などが並べられている。
剣、槍、ハンマー、弓矢などこれもそれぞれ分類されて壁にかけられているものまであった。
しかも武器もしっかりと手入れされている。
ちょっといいなと思うナイフがあったけど流石に泥棒までしたら言い訳もできないので手は出さない。
「……防具」
武器と防具は分けてあった。
それぞれの部位ごとに防具も分けてあったり人型の木製人形に着せてあったりもしている。
ピッカピカに磨き上げられた大きな盾が壁に掲げてある。
まるで博物館みたいだとドゥゼアは思った。
「今度は美術品ですかね?」
さらに移動してみると絵画や木製ではない彫刻作品などが置いてあった。
その中でも気になったのが同じ人を書いているような肖像画が数枚あったことである。
もしかしたらこれが人だった頃のリッチなのかもしれないと思った。
目鼻立ちの整った割とカッコいい顔をした男性である。
「ともかく分かったのはリッチが几帳面そう……」
色々と部屋を探ってみたけど分かることといえばリッチが非常に几帳面にものを整理していること。
気持ち良いぐらいに整理されているのはいいのだけどそれ以上はなにも分からないと分かった時だった。
おもむろにドアが開いた。
美術品はどれも小さいものが壁に取り付けられた棚に置かれていて隠れ場所がない。
「ふんふふーん」
「やばい……」
「えっ……ぎゃああああっ!
どちらさまですかぁー!」
部屋に入ってきたのはスケルトンだった。
鼻歌を歌い、大きなバケツに掃除道具を入れて入ってきたのだった。
ドゥゼアたちも突然のことで驚いていたのだけどそれを上回る勢いでスケルトンの方が悲鳴を上げた。
一瞬リッチかと思ったけれどそれほど強い魔力を感じないのでおそらくスケルトンである。
「ななななな、何者ですかぁ!」
動揺しすぎ。
相手が驚きすぎているとむしろ冷静になってきてしまう。
「ちょ、話を……」
「しゃべったぁー!」
「なんなんだよこいつ……」
ドゥゼアが声をかけただけで震え上がるスケルトン。
もはやドゥゼアは引き気味である。
「いやー、助けてー!」
「話を聞けぇ!」
取り乱すスケルトンに思わず声を荒らげる。
「うぅ……どちら様ですか?
お客様がいらっしゃるとはうかがっていないのですけどぉ」
「俺たちは招かれた客じゃない。
だがリッチに用があって来たんだ」
「ご主人様にですか?
また何をなされたのか……」
「勝手に入ったのは悪かった。
リッチと話がしたい」
「ご主人様とですか?」
「そうだ」
このスケルトンある程度話が通じそう。
ドゥゼアが堂々と話すと忍び込んだこともあまり気にしていないようにスケルトンは答える。
「残念ながらご主人様は今お出かけなさっていていらっしゃらないのですよ。
多分もうすぐ戻ってくるとは思いますけれどいつお戻りになられるかは分かりません」
「是非話したいことがあるんだ。
ここで待たせてもらってはダメか?」
「あら、本当ですか!」
「いいのか?」
「ええもちろん!
1人で暇だったのです。
お客様がいてくださると嬉しいですわ。
そもそも他の骨どもはしゃべりゃしない……
ただ話聞いてくれるだけっていうのもありがたくはあるんですけどやっぱりリアクションってものが欲しいじゃないですか。
だけど話せるのは私かご主人様ぐらいで……」
許可はもらった。
けれど途端に始まるマシンガントーク。
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