ゴブリンはスケルトンナイトを追いかけます5
他の魔物は知らないが今現在のドゥゼアたちにとっては立地に近づくほど驚異的な魔物が少なくなるということなのである。
基本的にまだ残っているのは大体がカエルであって食料についても心配しなくてもいいのもまたありがたかった。
「シッ、隠れろ」
あと警戒すべきはアンデッドであった。
リッチの配下であろうスケルトンなどが森の奥に行くに従い見られるようになってきた。
巡回して警戒しているようでドゥゼアたちは出来る限り遠くからスケルトンを見つけて隠れたりして戦闘を回避する。
「ほっ!」
近くに落ちていた石を拾って投げる。
離れたところにある木に当たって乾いた音が響く。
それに反応してスケルトンがそちらを確認しに行く。
「行くぞ」
その間にササっと通り抜けていく。
あまり知能は高くなく、感知能力も優れていないのか離れたところで先に見つけられたらスケルトンを回避して進むのは難しくない。
勝負は日が暮れるまで。
ただでさえ薄暗い森の中は日が落ちると真っ暗になる。
スケルトンにとっては昼夜どちらでも違いがないがドゥゼアたちにとっては暗闇になると大きく不利になる。
慎重に、それでいながらも素早く森の奥を目指す。
「おい……まさか……」
「あれがリッチのお家?」
「そうである」
「大きい」
「いや、大きいってか、家……」
「家ですね。
まさしく家」
スケルトンも増えてきて回避して進むのも大変になってきた。
日も落ちて木々のわずかな隙間から差し込む光も弱くなってきた頃にようやく森の奥に着いた。
リッチの住処とはどんなものかと想像していた。
元人なので人に近い生活をしているのだろうかと想像を膨らませていたが目の前に現れたのは家だった。
しかもかなりの豪邸。
予想外の人工的建築物にドゥゼアも驚いてしまった。
「どうする?」
よく見極めてから侵入したいところであるがもうすぐ日が完全に落ちる。
たまたまスケルトンは近くにいないが遠くにこちらに向かってきそうなものがいる。
屋敷の近くまで行くなら今のうちだ。
引くのか、進むのか。
レビスがドゥゼアを見る。
「行こう」
仮にここで下がってもスケルトンのいないところまで行くのは厳しい。
進むより選択肢はない。
ドゥゼアたちはサッと屋敷に近づく。
ちゃんと窓はガラス窓になっている。
中を覗き込む。
暗くて良く見えない。
玄関の方に向かってみる。
無駄に凝った意匠までドアに施してあり、ただデカいだけではなくて細かいところまで凝って作られているのが分かる。
「あっ……」
ふとドアノブに手をかけたユリディカ。
開くかなーなんて軽く考えていたのに簡単にドアが開いてしまって焦る。
みんなでサッとドアの横に隠れる。
「だ、大丈夫、そう?」
押された勢いで音もなくドアがゆっくりと開いていく。
しかしその様子を確認しに来るスケルトンもいない。
「ドゥゼア、来る」
代わりに外を巡回しているスケルトンが迫ってきていた。
「入っちゃえ!」
どうとでもなれ。
思い切ってドゥゼアは屋敷に飛び込んでドアを閉めた。
多少骨がぶつかってカラカラとした音を立てながら外をスケルトンがドアの前を通り過ぎていく。
「……ふぅ」
なんでこんなに緊張しなきゃならないのか。
「さて……」
窓から覗き込んだ感じでわかっていたけれど中も明るくはない。
明かりなどなくて外が暗くなってきたので屋敷の中も自然と暗くなっていた。
「あっちから来るよ!」
ユリディカのミミがピクピクと動いて音を感じ取る。
あまり軽いためなのか足音がしないスケルトンの音を聞き取っていた。
「とりあえず逆に逃げよう」
今外に行けば先ほど通ったスケルトンがまだいる。
音のする方と逆側にドゥゼアたちは逃げる。
屋敷の中も見た目上普通の屋敷のようで部屋がいくつか並んでいる。
「むむむ……こっち来てる」
どうやら屋敷の中を巡回しているのか足音はドゥゼアたちの方に来ていた。
しかし屋敷の中に隠れられそうな場所は部屋しかない。
「くっ……ユリディカ、適当に逃げ込む部屋決めろ!」
「ええっ、私?」
「そうだ」
こういう時なぜか運がいいのはユリディカな気がする。
どの部屋に入るか決める基準になるものは何もない。
それなら運の良さそうなユリディカに選んでもらうのがいいと思った。
「んー、えー、じゃあここ!」
ユリディカが選んだ部屋のドアを開ける。
幸い鍵などかかっていないようであっさりと開いたのでそこに飛び込む。
息を殺して気配を消す。
足音が近づいてくる。
「バレたか……?」
ドアの近くで足音が止まり緊張が高まる。
ドゥゼアたちは武器を構える。
いざとなったら先制攻撃を加える。
「離れていく……」
ユリディカが目をつぶって音に集中する。
再び動き出した音は離れていく。
「緊張の連続だな」
「わっ!」
「どうした?」
ホッと一息ついて振り返ったユリディカが驚く。
「なんだこれ……」
いつの間にか日は落ちて月が昇っていた。
窓から差し込む光に照らされてなんとか部屋の中が見えていた。
「……魔物の像?」
部屋の中には像が並べられていた。
木製の像で見てすぐになんの魔物なのか分かるほどに精巧に作られている。
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