第8話 兎耳ガール爆誕です(幕間end)

シーンⅣ(始まりの迷宮一層最奥部・小さな部屋・輝いた七色の光がうすれた直後)



 大きな揺れに身を任せる状況から気づくとなぜか岩肌の壁に囲まれた地下にいた。


 なにもわからない状況に流され傍らにいた動けない生物の大きな心臓を喰らった。

通路を進んだ先で倒れていた巨大な敵の心臓を喰らった瞬間おかしなことが起きた。


――なにがなんだかわからない。そもそも自我を得てから思考を始めた理由も謎だ。



 ここの地上部分は都心に隣接する公園で周囲は変わりばえのしない市街地らしい。

高層ビルが立ち並んだオフィス街に隣接して大阪市内でも副都心と呼ばれる地域だ。



 その知識を得たのも平均的日本人らしい住民の集合知を誰かに授けられたせいだ。


 その誰かに説明されたわけでもないからわけがわからないなりに考えるしかない。

「さっき全身に感じた七色の光はなんなんだ。自分になにがおこったんだろう……」


 生きるための本能しか持たなかったはずの自意識が変化を遂げたことがおかしい。

「なに一つわからない状況だけど……思考しながら言葉を口にして話せるらしい?」


「飲んで喰って疲れたら朝まで眠る。それが生きることで次世代を残すことは本能」

 愛玩動物として生存本能で行動するしかないし飢えと渇きで餓死する間際だった。


「自ら考えて行動する理由はなんだろう。生きるため様々な思考が必要になるのか」


 なんとなく思考を巡らせながら立ったままの状態で上から下まで視線を巡らせる。



「肉体が変化して思考を始めた自分。これらのすべてがおかしいとしかわからない」

 一般的な人間らしい女性の姿に変化したことを理解しても納得できるはずがない。


 人間の女性でも成体より子供に近いと自分で判断できる程度には標準体だろうか。

豊満な胸部装甲だけが不自然に見えるぐらいの圧倒的すぎる存在感で驚きしかない。



【単独デ階層ノ攻略ヲ確認】ほんとになにもわからない【新人類ノ進化誕生ヲ認識】

 直接頭に響いた機械音は地球にいるすべての人に対して等しく届けられたらしい。


 言葉の意味を正しく理解させられられることですべての人類が驚くしかなかった。

人類を凌駕する異能を秘めた存在が生まれることで新世界の到来を認識させられた。



〝彼〟……すでに否としかいえないぐらい別の意味で究極的な進化を遂げた異能者。

純粋な意味で彼女はまったく別の存在として人類とは異なる種族に生まれ変わった。


 あくまでも現状に置いて彼女だけの特例であり世界で唯一無二と呼ばれる存在だ。

彼女は純粋な人間じゃないし魔物でもない〝獣〟と決定的に異なる身体に進化した。


 これらすべては偶然であり成り行きの結果もしれないが異能を行使された審判だ。

あらゆる可能性を秘めた【異空間】として世界に誕生したダンジョンの恩恵になる。


「こんな自分が生まれた理由はなんだろう」小さくつぶやくと細い全身を震わせた。

 突如として形作られた新たな体に付随する明晰に思考できる頭脳に戸惑うだけだ。



 論理的な思考と判断力がありえないような状況で見えない未来に怯えるしかない。



【全知全能で圧倒的存在】人を超越するかもしれない【地下迷宮を生み出した神格】

 身体の震えが収まらず留まる兆しのない違和感を意識して強く両胸を抱きしめた。


「なにか得たことに気づくことで始まってもなにをするべきか現時点でわからない」

 これから進むべき道筋と最後に至る終着点に対しての予測などできるはずがない。



「なっ……なああああぁぁぁぁんんんん――――」そこで一瞬だけど息が止まった。


「なああぁぁぁんじゃああああぁぁぁぁこりゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 いつまでもダンジョンで鳴り響いた絶叫は彼女が解き放つ魂の叫びかもしれない。


 ここで一つだけ哀しいおしらせになるがその叫びを理解できるものはいなかった。

激しいドップラー効果により反響されながら甲高い少女の罵声だけが虚しく轟いた。



 ちなみに〝彼〟……と最早呼べないウサギと異なる身体を持つ存在である彼女だ。

なぜか〝彼女〟に進化を遂げた肉体は透明な美白に華やかさでも半裸の状態だった。


 猫目の双眸は真紅と琥珀に輝いた二重瞼で細面の小顔には艶やかな口唇が際立つ。

高々と屹立する右耳は純白だ。伏せた左耳と同色の艶やかな黒髪は細肩まで流れる。



 美しくまとう毛並が変化したらしい白肌にミニスカートのワンピース姿が映えた。

バランスの整いすぎた彼女の全身は一片の瑕疵もない女神と見間違うほどの美貌だ。


 可憐すぎず艶気に偏らず際どさと美しさの曖昧な境界線にいる女性かもしれない。

究極的に整えられたであろう他者を圧倒するほどの美しさはエロさを強調している。



 リアルな意味で白黒ウサ耳バニーガール(お色気感あふれる片垂れがエロすぎる)

現世に忽然と舞いおりたばかりの女神さまは見目麗しい美貌の際立つ獣人族だった。


 遠くない未来に起こる惨劇など誰もしらない状況で哀しい最後のおしらせである。

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