5

 4/15、私は駐輪場から裏門の方へと移動するGPSを確認してから、GPSの設定をリセットした。その後、所有する2台のスマートフォンで位置情報を共有した。朝いつも通りの電車に乗って学校に着いて、あの人の姉の自転車のサドルの裏からあの人のスマートフォンを剥がして、自分の2台目のスマートフォンを同じ場所にガムテープで貼り付けた。周りからは不審に思われただろうが、あの人と違って犯人が遅刻してくる樋口だと分かっているため、この時間に駐輪場にいる他の生徒に目撃されようと樋口に見られることは絶対にないので作戦に影響は出ない。私はあの人のスマートフォンを入手することに成功した。勿論目的は中を見ることだ。しかし、あの人のスマートフォンはパスワードがかかっていたため、中は見れなかった。少なくとも中学時代は「見られて困るものはない」などと言ってパスワードなんて設定していなかったはずだ。あの人はやはり私に何か隠しているんだ。不信に思った、というより確信した。そろそろ我慢の限界だ。もうあの人を100%信用することは出来ない。


 学校であの人と会って、あの人には私のスマートフォンを渡した。今日樋口は十中八九あの人の姉の自転車を盗み、犯人だとバレる。そして、私があの人のスマートフォンを見ようとしたこともバレる。でも、そんなことは関係ない。あの人が私に隠し事をしているのが悪いんだ。案の定GPSは放課後動き出したが、米道くんのバイト先の店で止まったのは意外だった。あの人は私に一緒に来るよう要求した。私を学校から遠ざけているようで私は拒否した。その時の私のあの人への信頼はゼロだった。あの人のことを信じたかったのに、信じられない。不快感しかなく、あの人への返事はとても低く冷たい声になってしまった。あの人が犯人を確かめるように私も確かめなきゃいけないことがある。あの人が樋口を追いかけて、学校からいなくなるのは私にとっては好都合だ。あの人が米道くんのバイト先へと向かったところで私は職員室へと向かった。


あの人を信じなければ、部室に電気がついた謎は心霊レベルから小学生レベルにまで一気に下落する。そして、なぜあの人がそれを秘密にするのか、私には見当がついている。決着をつけよう。今日で全部終わりにする。私の推理は間違っていない。私はそれを証明しに行く。勘違いしないで欲しいが、私はあの人を嫌いになったわけではない。いくら不満があっても、いくら不信感があっても、私の最大の防御にして、最愛の相手はあの人なのだ。私は私のために真実を追求し、そして断罪する。これから行われるのは何も知らない私が、“知る“ための戦いだ。あの人の言葉を借りるなら私はこれより、“善“から“悪“になってしまう。でも仕方ないよね。だって、あの人が“悪“意側なんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る