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春休み、あの人から1度も連絡は来なかった。中学時代も学校がない日は会うことはしなかった。なぜなら家に入れば悪口を言われることがないからだ。高校生になってからは比較的もっとポジティブにあの人と接触できていると思ったが、あの人的には私は学校のない日に会うような人間ではないのだろうか。
春休み開けた最初の部活で、あの人の二人きりになった。久しぶりだったが、あの人のそばは心地よかった。私は春休みの間暇だったので、沢山推理小説を読んだ。あの人も「推理小説を読んでいた」と言っていた。沢山感想が言い合えるな、と喜んでいたが、あの人は自分が読みたいと言っていたクローズドサークルの新作すら読んでいなかった。あの人は、春休み何をしていたんだろう。私はあの人のことを不信に思った。あの人が私に嘘をついたことが悲しくて泣いてしまった。あの人に怒っていた。あの人はおそらく会って初めて私に怒った。最近はあの人に反論することもあったが、怒られることはなかった。私に声を張り上げて怒るあの人を見た瞬間、私の日常がスカスカの文章に変わってしまった気がした。なんであの人は急にあんなに怒ったのだろうか。判断するには前後の文章がスカスカすぎる。その日はあの人から謝ってきて、私もあの人と仲悪くなる訳には行かないので不服ではあるが仲直りをした。
私が次にあの人に不信感を抱いたのは、無人であるはずの部室の電気がついた事件だ。あの人は、部室の電気がついたのは、地震により停電が発生し、復旧した瞬間を私が目撃した、というものだった。香織も米道くんもその推理に納得していたが、私には、その推理はお粗末すぎると思った。私は地震が起きた時、部室に居たのに気づきもしなかった。心が動揺していたとはいえ、その程度の地震で停電が起こるだろうか?また、あの人は電気を付けたまま戸締りしたことになる。電気消すのを忘れるなんてことあるのか?真っ先にすることだろう。それよりもあの人の推理が間違っている確実におかしな点がある。高橋先生は写真部の部室の鍵がしまってるか2回確認しているんだ。1回目はあの人が鍵を閉めて、職員室に向かっている時だ。あの人の言い分だと、あの人が鍵を閉めた時は電気をつけ忘れていて、高橋先生が1回目の、写真部の部室を確認した時には停電していて消えていた、ということだ。これは筋が通っている。その後、電気は復旧し、私はそれを校門付近で確認。その後、あの人と電気がついてる所を確認して帰宅。高橋先生もそれを見ている。高橋先生は気のせいだと思ったと言ったが、私もあの人も見ているのだ。気のせいなのでは無い。ではなぜ、高橋先生が2度目鍵がかかっているか確認した時、電気は消えていたのか。あの人に問い詰めればもう1度停電したんだろう、とでも言うだろうか。馬鹿馬鹿しい。あの人は誰かを庇ってる。あの日、写真部の部室に侵入した誰かを。私はそんなように考え、あの人に対する不信感は増していった。1度あの人に聞いたことがある。「私に何か隠してないか。」と。あの人は「隠していない」と言った。私はあの人を信じることにした。日々増えてくあの人に対する不信感は、中学時代に急に無視されて言った女の子達に対する気持ちと同じものだったが、その気持ちを解消することが出来る人もあの人しか私にはいないのだ。私にはあの人を信じるしかない。ところが、いくら考えても電気がついたトリックは思いつかなかった。あの人への不信感を払拭する為にも、私は必死でこの謎を解こうとした。しかし、いくら考えても密室状態を保ったまま電気をつけたり消したりする手品のような現象を説明することは出来ない。出来なければ出来ないほど、あの人への不信感はより一層強まり、あの人への不信感を払拭するためにやってるはずが逆効果となっていた。というのも、“あの人を信じさえしなければ一瞬で謎が解けてしまうからだ“。
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