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米道と2人でGPSの位置へと向かって走った。普通に考えて自転車に追いつける訳がないが、GPSは店から100m付近で停止していた。おそらく、店から自転車で逃亡し、追ってこないことを確認してからサドルの下のスマートフォンを剥がして捨てたのだ。樋口グループもさっきの話を聞いていて、盗んだ自転車にGPSが仕込まれていることを知って、このままだとバレてしまう、と外で着メロを聞くフリをして逃亡の時期を測っていたのだ。
何かの不具合で音がならなかったが為に、樋口グループに逃亡のチャンスを与えてしまった。
「探偵さん、樋口はこれまでの自転車盗難に便乗して今日1台だけ盗んだんじゃない?」
米道は俺と並走しながらそう言った。
言いたいことは分かる。鍵をかけた自転車が3台盗まれている以上、自動車を持っていないと犯行が不可能だ。5台盗んだ犯人と、それに便乗してその犯人に樋口は罪を押し付けようとしたのかもしれない。と、米道に言いたかったが、走りながら喋らことが出来るような人間ではない。俺は頭を軽く引いてそれを米道への返事とした。
探すまでもなく歩道のど真ん中にガムテープが貼り付いているスマートフォンが落ちていた。
「良かった、壊れてない?」
GPSは正常に機能してるし、拾ったスマートフォンもぱっと見、外傷はない。だが、
「これは誰のスマートフォンだ?」
「え?探偵さんのじゃないの?」
道理で音が鳴らないわけだ。これは俺のスマートフォンじゃない。俺はずっとこの、“誰か“のスマートフォンの位置情報を追っていたのか。とは言っても誰なのかは決まっている。
「波上だ。波上のサブ端末かなんかだ。」
それしかない。波上は昨日俺と位置情報を共有した後、俺が駐輪場から離れたのを家から位置情報で把握してその後、俺の位置情報を設定で削除し、自分のスマートフォン2台を互いに位置情報を共有させてサブ端末と学校に着いてからサブ端末と俺のスマートフォンを貼り替えたんだ。今日いつもより教室に来るのが遅かったのはその作業をしていたからだ。
俺はいつの間にか、腕を組んで左手人差し指を下唇に当てていた。
「どういうこと?波上さんと樋口たちに繋がりがあったってこと?」
「いや、違うな。」
「ごめんよ、探偵さん。これって今どういう状況なんだ?」
すまない、米道。俺にも分からない。いや、正確には“自転車泥棒“の件ついては全ての合点がいった。だが、真っ先に不安になったことがある。
「俺たちの計画が波上にバレたかもしれない。」
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