16
翌朝、昨日と同様に、始発の次の電車で一番先に学校に到着し、裏門付近にビデオカメラを設置した。これは念の為、波上にも言っていない。
その後は朝のチャイムまで怪しい行動がないか、駐輪場で見張りをすることにした。居咲先輩は先生に言ってないようだったが、1年生2人も盗まれているということで、学校中にある程度自転車泥棒の話は浸透していた。見張り中は特に目立った言動もなかったが、2、3年生の何人かからは、「いつも善意でご苦労さまです。」などといった冷やかしを受けた。そろそろ戻らないと遅刻だ、という時に1年生2人組が現れた。樋口と、もう1人は知らなかった。樋口ともう1人は遅刻しそうなので慌てて、2人とも鍵もかけずに入口付近に停めて出ていこうとしたため、俺は止めた。
「おい、自転車泥棒が流行ってるから鍵かけろよ。」
樋口と隣の1年は渋々鍵をかけた。
それから俺の方に寄ってきた。
「あんた、探偵さんだろ?木口先輩から聞いてるぜ。あんたが自転車泥棒なんじゃないかってな。」
は?木口は同じクラスだが特に喋ったことは無い。米道は仲良さそうにしていたが、米道に仲悪そうなやつなど存在しない。何故、木口が俺を疑うんだ?
初めて面と向かって喋るが、樋口は全てのサイズがデカかった。ツムジからつま先までXLサイズだ。その体で足が速く、運動神経が米道並みらしいから喧嘩させたら最強に違いない。
「どういう事だ?」
「今だって盗みやすそうな自転車吟味してるんだろ?」
「そんなことはない。」
「木口先輩によると、自転車が最初に盗まれた日、あんた遅刻ギリギリで教室に来たらしいな。だが、遅刻した俺はあんたのことその日見なかったぜ。それに昨日、昨日も自転車泥棒があった日だ。あんたが放課後に正門近くの木の影からカメラを取り出してるのを俺のツレが見てたぜ。」
そう言って樋口は隣の1年の肩を抱いた。隣の1年も何故か誇らしそうに頷いた。
「そして、今日。謎に駐輪場に張り付いてやがる。何かトリックでも仕掛ける気か?」
さっきまで遅刻で焦っていた人間とは思えないほどゆったりと不気味に冷静に話しかけてくる。体のサイズもそうだが、喋り方にまで雰囲気があり、高校1年生とは思えない威圧感がある。
厄介なやつに絡まれたな。こんな感じで意外と頭がキレるタイプか。確かに俺は最初に自転車が盗まれた日、遅刻ギリギリで教室に到着した。でもそれは別の理由である。
「俺は無罪だ。早くしないと遅刻するぞ。」
「まあ、勘弁してやるぜ。もし、今日も自転車盗難が起こったら俺はアンタを犯人として先生に突き出してやるからよ。」
そう言って2人は走って校舎へと入っていった。呑気な奴らだ。もし、俺が注意してなかったら盗まれてたのは鍵かけてないお前たち2人の自転車だろ。俺はそう思いつつも、犯人を特定する作戦を閃いてしまった。
餌を作って犯人に喰わせれば良いのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます