15

「美味しかった〜!ありがとう英介!」

「うん!米道くんありがとう!美味しかった!」

「甘かった。」


3人がパフェを食べ終わり、店を出ると米道がわざわざ見送りに来てくれた。

米道は満足そうな表情を浮かべ、「じゃまた部活で〜」と、手を振ってくれた。

米道は良い奴。


坂火とはその場で別れ、俺たちは駅へと歩みを進めた。姉のおさがり自転車は駅に置いたままにしているが、米道のバイト先も学校も駅もそこまで遠くないのは幸いだ。

「米道くんのバイト先、店長以外ほとんど学生さんのバイトみたいだね〜。それでお店回してるの凄いよね。」

ああ、じゃあ厨房で目があった店長らしき人物は店長か。とてもじゃないが学生バイトには見えないしな。


俺はおそらく波上が考えているであろうことをぶつけてみる。

「波上、もしかして俺が自転車泥棒だと思ってる?」

波上は脈絡のない俺の発言に少し時間が空く。

「少しだけ。」

彼女は1歩後ろで何やら手を使ってジェスチャーをしているようだが、俺には見えない。「私に隠してることある?」みたいに聞いてきたのはこのことか?だとしたら見当違いも甚だしい。

「俺は姉にビデオカメラのことなんて言ってないし、姉は今海外留学中だ。」

「え?そうなの?」

波上の声色が少し高くなったのを感じる。結構本気で俺及び俺の姉が犯人だと思ってたってことか?自分でビデオカメラ設置して?

「おい、波上。謎を解く時はまず第1になんの利点があるかを考えるべきだぞ。俺が犯人ならビデオカメラを設置したことで裏門を通るしかないような状況は作らないぞ。」

自分で言ってて疑問に思った。犯人はなんの利点があって、裏門を通ったんだ?これじゃあ俺の身内に犯人がいるって言ってるようなものじゃないか。ビデオカメラが設置されてると分かった以上、その日は何もしない、が正解なんじゃないのか?


それ以前に鍵がついた自転車を盗んでどうする気なんだ?盗んでも走れないし、分解して部品でも売る気か?分解して売るには学校から配布されるシールを綺麗に剥がす必要がある。しかし、何年も貼ってあるシールを綺麗に剥がすのは至難の技だ。姉のおさがり自転車にはら未だに姉の代の色だった黄色のシールついたままである。


犯人は誰だ?

波上は俺のことを本気で犯人だと思ってたようだし犯人ではなさそう。坂火は身内に昼自由に動ける人間がいないから犯人ではない。となると、米道か?

だが、米道は自転車持っているし、盗む必要があるとは思えない。

まあ、明日にでも米道には親の職業を聞いてみるか。

その間、波上は俺の1歩後ろから離れることなくピッタリとくっついていた。中学時代を彷彿とさせるほど、いつも以上に距離が近かった。

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