6

 その後は約1ヶ月ぶりの部活ということで雑談に花を咲かせた。

波上も楽しそうに喋ってこそいるが不満な表情が見え隠れしている。それで隠してるつもりなのか、と思うくらい露骨に顔に出ている。


「てかさ、職員室での探偵さん、めっちゃウケたくね?」

「え?いつも通りじゃなかった?」

「いやいや英介、確実にいつもと違うところあったよ。」


坂火は俺を小馬鹿にしてくる節がある。しかし、根がいい奴だと分かってるからあまり怒ろうとは思えない。そのため言われ放題である。


「うーん。なんだろ?」

「正解はねー、めちゃくちゃ写真部って言ってた」

「あー!確かに!」


坂火は言いながら笑っていた。米道もつられて笑う。


「探偵さん、いっつも写真部って言うと名探偵部だって怒るのに先生の前だと普通に写真部って言ってるの流石に面白いって。」


坂火はゲラゲラ笑ってた。

米道は俺の表情を伺いながらも笑っていた。米道、良いやつ。

くそぉ!仕方ないだろう、先生の前で「名探偵部」だ!と妄言を振り撒いても相手にされないんだから…。

というのは、「名探偵部」は俺が勝手に言っているだけで、この部活は「写真部」なのである。なぜ俺が「写真部」を選んだかというと、俺が1年生だった時の2年生が、長岳先輩しかいなかったからだ。部活は最低5人が必要であり、「名探偵部」を新たに創設するには俺と波上の他にあと3人必要だった。あと3人など集められる気がしなかったため、「名探偵部」創設を諦め、部活を乗っ取ることに考えをシフトした。ならば1年我慢して2年生の少ない部活に所属し、来年は「名探偵部」部長として突如として君臨しよう。「写真部」はほとんど部活に来ない幽霊の長岳先輩のみなので乗っ取るにはこれ以上ない部活だった。去年のうちから途中参加の坂火と米道には来年からは「名探偵部」として名を馳せることになる、と洗脳しておいた。

波上は、、


と波上の様子を伺おうとした時だった。


コンコンッ


部室のドアを叩く音がした。

「ん?なんだ?」

ドアから1番遠い位置にいるにも関わらず、1番行動派の米道がドアを開けた。


ドアの先にいたのは知らない女子生徒だった。

「えっと、どなたですか?」

米道が尋ねると、その女子生徒はこう言った。


「善意の名探偵さんに用があってきました。」


これはこれは今学期初の依頼人様でしたか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る