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「犯人はあなただ!!」
俺は犯人を指差した。しかし、その指は人差し指でも中指でもなく、親指だった。
俺は俺を指差していた。
全員が驚きの表情を見せていたが、米道は「犯人はあなただ!」と言いながら自分を指差す俺に「ブッ」と吹き出した。波上がとびきり驚いた様子で食いつくように発言した。
「え?どういうこと?」
「電気を消し忘れていたのさ。」
「はい?」
坂火は何言ってんだ?って目でコチラを見てくる?
「あのねー、探偵さん。マリエは“電気がついた“瞬間を見てるのよ?つまり、消し忘れでは成り立たないのよ。」
波上は言いたいことを坂火が言ってくれた、とうん、うん、と頷いた。
「米道、なんで机と椅子がずれてるか本当に分からないか?バイト先で昨日なんかなかったか?」
米道は少し考えた後、「ああ!」と声を上げた。
「地震だ。」
そうだ。おそらく波上はこの事を知らないのだ。昨日は感情的になりすぎて気づかなかったのだ。昨日は怒り慣れてなくて、足元がふらついて脳みそがクラクラ揺れたのかと思っていたが、実際に揺れていたのだ。俺はそれをニュースで見て初めて知った。
「え?地震なんか関係ある?」
坂火が聞いてくる。
「地震で起こることって揺れること以外にも何かないか?」
坂火はピンと来てないようだったが、米道は理解したようだ。
「停電だ!」
「その通り。俺は電気を消し忘れてしまい、電気をつけっぱなしにして鍵をかけて外に出た。上の窓の鍵は結論から言うと閉まってたんだな。しかし、俺が外に出るか否かくらいのタイミングで停電が発生した。」
「マリエちゃんが見たのはその停電が復旧した瞬間ってことか!!」
米道はスッキリした〜!と言いながら狭い部屋を走り回った。本当にお調子者だ。
坂火も理解出来たようで、「え〜、探偵さんのこと初めて尊敬したかも」と拍手した。一言余計である。
「報酬は要りません。善意でやっておりますので。」
波上に極上の決め台詞を吐いたところでこの事件は終了だ。
しかし、波上は不満そうだった。
おかしいな。完璧な推理のはずだぞ。
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