第7話 魂の儀⑤

俺の名前はカイン・イーギル。ついさっき神速というスキルを発現させた男だ。親父のスキル、剛剣はどんな重たい巨大な剣でも自由自在に操ることができるスキルだ。それに対して、俺のスキルはおそらく速さに特化したものだろう。どちらかといえば、親父のような攻撃力全振りみたいな方が俺の好みだが、それでも戦闘に特化してそうなスキルだっただけでもありがたい。

そして、俺に続いてスーベリアにも神聖魔法というあまり聞いたことがないスキルが発現した。神官によれば回復、防御、攻撃全て可能なスキルだそうだ。ちょっとやりすぎじゃねぇか?

いずれにせよ、俺、スーベリアと戦闘系スキルが発現し、そして今カラルの儀式が終わった。

風水魔法。文字どおり風と水を操る魔法だ。戦闘はもちろん普段の生活にも生かすことができる有能なスキルだそうだ。右の首筋には聖印が刻まれている。

席に戻ろうと振り返ったコラルの顔はいつもみたいにニコニコしていなかった。少し、困ったような複雑な顔。

わかる、わかるぞコラル。ここまで15人が終わって、戦闘系スキルが9人、非戦闘系スキルが6人。戦闘スキル発現者のうち3人が俺たちだ。

いや、できすぎてるだろ。しかも3人ともだいぶ強そうなスキルだし。これさ、ビューハルト、料理人のスキル発現しちまうんじゃねーのか?昨日余計な話もしちゃったしよー。16人目の発現が終わった。暗視という概ね非戦闘系のスキルだ。これで9対7。

でも、うちら3人のスキルがあれば、ビューハルトが料理人でも、普通に冒険者できんじゃねーかな。そんなことを思っていると、いよいよビューハルトの番がきた。


「ビューハルト・アバンティ。水晶の前へ。」

水晶へと進むビューハルトの顔を横目で見る。いつもどおり、特に緊張も気負いも感じない。ビューハルトは押しが弱いところがあるけど、妙に肝が据わっている。

そして、ついに儀式が始まった。そのとき、水晶がそれまでと明らかに違う光を放った。思わず目をつぶるほどの光だ。

「ビューハルト・アバンティ。」

そこで、一瞬間をおいて、

「其方には最適化のスキルが発現した。」

と神官が告げた。

「未だ発現したことのなかったスキルだ。」

偉そうな神官が言った瞬間側に控えていた神官4人がハルトを取り囲んだ。

「ビューハルト・アバンティ。すまないが少し別室で待ってもらうことになる。」

「は、はい…。」

目の前で起こっていることがよく分からず、頭がついていかない。あれ、なんかこれビューハルト拘束されてるみたいじゃない?掴んでこそいないけど、四方に神官がついてるし。

そして、移動していくビューハルトの左側の顔を見て、俺の混乱はますます深まった。あれ、ビューハルトの母ちゃんと、父ちゃんの聖印ってどこにあったっけ。 

確か…母ちゃんは右手の甲に。父ちゃんは…どこだったかな。でも少なくともああじゃなかったよな。

ビューハルトの顔の左側全体には、その頭髪と瞳と同じ色の、黒い聖印が刻まれていたんだ。



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