第6話 魂の儀④

いよいよ魂の儀が始まります。今年この町で魂の儀を受けるのは、私たち4人を含む18人。今は数人いる神官の方の中でも偉いんだろうなと思う人が、魂の儀の歴史とか、重要性とかを話してます。長い。

これが終わればいよいよ儀式の始まりです。晴れの舞台を見届けるため、ママたちも後ろの席に座ってます。ただ、ビューハルトのママは、リーンちゃんが熱を出しちゃったから来れなかったみたい。残念。でも最近リーンちゃん、私とコラルに時々なんでか辛辣なこと言うことがあるから、いなくてほっとしたりもしちゃったりします。

私たちの順番は最初にカイン、次に私。その後コラルで、最後にビューハルト。

長い長い偉い人のお話が終わり、いよいよ魂の儀が始まります。

1人目の人は「剣術」、2人目の人は「算術」のスキルが発現してました。早くも戦闘系と非戦闘系のスキルが一対一です。そして、いよいよカインの順番です。

「カイン・イーギル、水晶の前へ。」

名前を呼ばれてカインが席を立ちます。チラッと見えた横顔は、卒業試験を受けたときよりも緊張しているように見えます。あ、カイン手と足が一緒に出ちゃってるよ。緊張しすぎ。

そして、水晶の前に立つと、カインに小さなコップが手渡され、そこに水差しから水が注がれます。

「聖水を口に含みなさい。そして両手を水晶の上に。」

聖水を飲んで、コップを神官に返したカインが、両手を水晶の上にかざすと、水晶が淡く光りました。

「カイン・イーギル、其方には神速のスキルが発現した。その名のとおり、神の如く瞬発的な移動を可能にするスキルだ。詳しくは後ほど教えよう。神に感謝を。」

脇に控えるほかの神官の人たちが「おお…。」とか「すばらしい…。」とか騒ついちゃってるよ。あれ、これ凄いの引いたんじゃないのかな。

「では、席に戻りなさい。」

促されて、席に戻るためこっちに振り返ったカインの顔を見る。めっちゃドヤってる〜。小さくガッツポーズしてるし。

そして、その額、カインのお父さんと同じ位置に、赤く光る聖印が刻まれていた。

よかったね、カイン。きっと魔獣との戦いで大活躍できるよ!


次は、いよいよ私だ。なんか、口から朝ご飯とかいろいろ出てきちゃいそう。朝お代わりしなきゃよかった。ぐ、呼吸ってどうするんだっけ。

「スーベリア・ウイグル。水晶の前へ。」

「は、ひゃい!」

呼ばれた、立たなきゃ!あれ、立つってどうするんだっけ…

そのとき、私の背中に誰かの手が添えられた。

「落ち着いて。」

小さなビューハルトの声が聞こえる。ふと力が抜けた。後ろに座ってるビューハルトが助けてくれた。ビューハルトたちは、こうして困ったときに私のことを助けてくれる。

大丈夫。私は落ち着きを取り戻して水晶へと向かう。手と足は同時に出てたし、聖水を注いでもらうカップを手が震えて落としそうになったけど、大丈夫。聖水は普通のお水と同じ味だったよ。


「スーベリア・ウイグル。其方には神聖魔法のスキルが発現した。回復、防御、聖なる雷による攻撃も可能な貴重スキルだ。詳しくは後ほど教えよう。神に感謝を。」

右目の下に暖かみを感じる。多分お母さんと同じ位置に聖印が刻まれたんだ。

「おお…。」「すばらしい…。」「ほほぅ…。」

なんかさっきよりザワザワしちゃてる。うれしい。うれしい。飛び上がって、跳ね回って、みんなに抱きつきたい。

でもまだだ。まだコラルとビューハルトが終わってない。喜ぶのはみんなの儀式が終わってからだ。こら、右手!勝手にガッツポーズしないでよ!

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