第4話 魂の儀②
「以上で冒険者登録の手続きは終わります。明日スキルが発現したら、スキルの申告をお忘れなく。冒険者の証となるブレスレットは、その際にお渡ししますね。」
俺たち4人は、滞りなく冒険者ギルドへの事前登録を終わらせた。
「滞りなく終わったとか思ってるんでしょ。何回書き直しさせられてるの?こんな簡単な書類で。」
ビューがボソッと呟く。
「私はカインにしては早く済んだかなって思ってるよ。えらい、えらい。」
とスーベリア。その隣でコラルがパチパチと拍手をしている。
「う、うるせぇ!問題なく申請できたんだからいいだろ!そんなことより飯いくぞ、飯!」
俺は恥ずかしさを誤魔化しつつ、場所の移動を促す。移動先は街の食事処なごみ亭。ちょうど昼飯時で、店内はだいぶにぎわってあるが、少し待って無事着席することができた。
「よし、それじゃあ明日の魂の儀に向けた前祝いだ、乾杯!」
俺たちは、それぞれ好きな飲み物が入ったコップを打ち鳴らした。残念ながら酒が飲めるようになるのは明日からなので、今日はジュースで我慢だ。
「はぁ、いよいよ明日スキルが発現するんだね。なんだか信じられないよ。」
ビューハルトがしみじみと呟く。
「おふくろさん、冒険者の件はかわらずか?」
「うん、スキル次第だって言ってるよ。」
「しかし、実際みんなどう考えてる、もし戦闘系スキルが発動しなかったときのこと。」
俺は、今まで称えて目を逸らしていた可能性、親父から出がけに言われたことを3人にぶつけてみた。すると、スーベリアは、
「んー、戦闘系スキルの発現率は5割くらいって聞くし、私も前からその辺は少し考えてた。でも、私たち多分連携もしっかり取れるし、1人2人非戦闘系のスキル持ちがいてもなんとかなるんじゃないかなって。なるべく冒険者やりたいし。」
と俺とほぼ同じ考えを口にした。だから、俺は「だよな、俺もそう思ってる。2人もおなじか?」当然同じだと思って、2人にも確認をした。だけどビューハルトはこう言った。
「うん、僕はね、その時は真剣に検討すべきだと思う。」
「検討?」
「非戦闘系スキルの人は、冒険者を諦めることを検討するべきだと思ってる。」
俺も含めたビューハルト以外の息が詰まった。
「…いや、冗談よせよ。ガキの頃からの俺たちの夢だろ。まずどうやったら冒険者ができるか考えるのが普通だろ!」
「うん、僕もそう考えてた。だから同じようなことを母さんと話したんだ。母さんは、非戦闘系スキルが冒険者になることは断固反対だって言ったよ。」
「そんなもん俺たちは4人でワンセットだ。うまくフォローしながらやれば絶対やれる。ジル爺のところで訓練もしてきたじゃねえか。」
「実際母さんも、そういう冒険者パーティーは見てきたって言ってた。非戦闘系スキルの人がいてもうまくやってるパーティもあったって。戦闘系スキルがなくても、剣を手にして戦うことはできるしね。でも絶対はない。そして、そのたまたまが起こったとき、死んでしまったらそれで終わりだって。僕はこの中の誰にも死んでほしくない…。そして、僕は、僕まで死んでしまうわけにはいかないんだ。」
「…お前がそう考えるのは分かる。でも冒険者やってりゃあリスクは必ずあるだろ!今更なにいってんだよ!」
「非戦闘系スキルの人は、魔獣に対抗するにも限界がある。本人のリスクは戦闘系スキル持ちの何倍も上だと思うし、それを庇おうとした仲間のリスクも明らかに高まる。」
「そのリスクを俺たちの連携でー」
「ちょっとストップ、カイン熱くなりすぎ。」
スーベリアが静かな声で、俺の声を遮る。
「まったく2人とも、まだスキルも発現してないんだよ。それはまた明日以降に話すべきことなんじゃないかな?」
穏やかな声に、俺の熱も引いていく。
「わりぃ、ビュー…ちょっと熱くなっちまった。」
「カイン気にしないで。大事なことを話したんだし、むしろありがとう。」
「カインは気づいてなさそうだけど、もうご飯きてるよ。あったかいうちに食べようよ。」
スーベリアの言葉に、コラルもうんうんと同意する。
「でもさ、実際のところ5割の確率だったら、残念みんな非戦闘系スキルでしたーってこともありえるよね。そしたらどうしよ。みんなでこういうお店でも開いてみる?」
「僕わりと料理好きだし、それも悪くないかも。料理人のスキルとか発現したりして。」
「いやいや、俺とかコラル、めちゃくちゃ接客に向いてなくね?大体どんなスキルが発現するかで、やれることもだいぶ変わるだろ。」
「あ、それもそうか。でもできれば4人で何かしたいなぁ。」
「それは大前提に決まってるだろ。」
ーコンコン、コンコン
とりとめなく続く会話中、コラルがスプーンで皿を叩く音が響く。
「わりわり、とりあえず飯食うべ。」
食事を始める音頭をとりつつ、俺は思ったよ。これなんか、めちゃくちゃ前振りになっちまってるような気がするんだけど…。
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