第3話 魂の儀①

魂の儀とは、この世界に生まれた全ての人間が受けることのできる儀式である。現在は神聖国レムルサが世界各地に構える神殿で行われており、成人となる年の春の月、第一日目に執り行われる。

聖水を口に含み神殿に備えられた水晶に手をかざすことで、人の魂に生まれつき眠っていた力が発現し、その時体に紋が刻まれる。人は力をスキル、紋を聖印と呼ぶ。

常に魔獣の脅威と向き合うこの世界において、スキルはまさに神から与えられた生き抜くためのギフトなのだ。


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俺の名前は、カイン・イーギル。つい先日、8年間の学生生活に別れを告げ、いよいよ魂の儀を明日に控えている。なんだかんだとあったが、いつもの3人と支えあいながら、なんとか無事卒業することができた。特にスーベリアがいなければ、俺は後2年は学生だったんじゃないだろうか。マジで感謝してるし、これからもお願いします。

物心ついた時から冒険者を志していた。親父が冒険者として街を魔獣の脅威から姿を見てきたからだ。自分が、自分の家族が、自分の大切な人たちが住むこの街を、この国を、この世界を守る。これ以上にカッコいい職業なんてあるわけねぇ。だからその夢が現実味を帯びてきた今、俺は心から興奮している。

おまけに、俺には同じ夢を持った仲間が3人もいる。控えめに言って最高だね。

今日は、あらかじめギルドに冒険者登録できるって話だったから、4人で冒険者ギルド行ってやっちまおうって話になってる。

「親父、ちょっと冒険者ギルド行ってくるわ。」

家を出る前に、長期遠征後で家にいた親父に一声かけたところで呼び止められた。

「カイン、事前登録しに行くのか?まぁ止めやしねぇけど、明日どうにもなスキルが発現したら生殺しみたいな感じになって辛くねぇか?」

「いや、剛剣スキルのバーナードの息子だぞ?俺は絶対大丈夫。非戦闘系スキルでも仲間とうまく冒険者してるやつもあるって聞くし、俺ら4人ならなんとかなるよ。」

「まぁ確かにいるけどなぁ。でもよ、もし4人揃って非戦闘系スキルだったらどうすんだ?」

「そんときゃ諦めて、4人で商売でもするかな。スーベリアとコラルは賢いし、ビューも小器用だから、なんだかんだでやってけるだろ。」

「おめえは本当にあいつらに頼りっきりだなぁ。」

んなことは、親父に言われなくても俺が1番分かってるつーの。冒険者になって、前衛でバリバリ活躍することで恩返ししてやらぁ!

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